第2話 僕の彼女と夏休み

夏休み。それは平凡な学生は殆の日をゲームで、

陽キャは遊びで、陰キャはオタ活で、リア充はデートをして過ごすだろう。

でも僕の場合はどれにも当てはまらない。

今日の日付は7月28日。彼女と待ち合わせの約束をして

ショッピングモールに行く予定だったのだが…。

「まさかこんな早く見つけられるなんてな。」

「アニキ!これを頭に渡しゃあ昇進待ったなしですぜ!」

眼の前に居るヤのつく方々に誘拐されていました。

ショッピングモールの前で待ってたらいきなり眼の前からきた男に

スタンガンを当てられて気絶していた。

今は体を縄で縛られた状態で車の床にくくりつけられ、身動きが取れない。

ふと窓の外高速道路の看板が見える。行き先は、千葉。

「にしてもこのガキなんでこんなに懸賞金高いんだ?」

コチラを兄貴と呼ばれている男がじっと見てる。視線は鋭く、

シャツの隙間から見える入れ墨が非常に怖い。

「なんかヤバい暗殺者の恋人らしいっすよ。確か…スタークでしたかね。」

「最近の日本の組は情報が早いな。これじゃ何処行っても安心できない。」

男二人が何処からか聞こえた声に警戒する。

「…水城さん?」

だがしかし水城さんの声が聞こえる理由に関してはよくわからない。

着信音にしてないし…。

「何処だ!出てこい!出てこれねえってんなら今からコイツに一発一発

銃弾ブチ込むぞコラ!」

男が僕の顔に銃口を突きつける。

その刹那、僕の視界から男が消えていた。いや、男どころか、

車の前部分が無い。動きを止めた車の残った後ろ部分が傾いて

道路へ滑り落ちた。

「良かった無事で。」

いつの間にか水城さんに抱きかかえられていた。

いつもこうなる。今年に入ってから襲撃にあって、助けに来た

水城さんに抱き抱えられてデート。それが一連。

そのせいで、拐われても襲撃されても、あ。水城さんが来るやつだコレ。

と最近は危険な事が分からなくなってきた。これぞ危機感の消失というヤツだ。

今日は何処へ行くのかと思ったら、よく見たらアタッシュケース2つを

持っている。…いや無理無理。ここから少なくとも3時間はかかる。

「さっそくで悪いんだけど…沖縄行こっか!」

嫌な予感は的中していたが、まさか沖縄とは。

だがココ付近の山道は完全に圏外。更にはバスも停まらない

場所からどうやって行く気なのだろうか。

縄をほどいてもらっている間に考えていたが、前のように

高速道路の車の上でも歩くのでは?と思いどうでもよくなった。

ほどき終わった瞬間、謎の機械音が近づいてきていた。

「また追手か何かか…。」

「いいえ。木島くん。この音は私のヘリの音なので気にせずに。」

…どこからツッコンでいいいか分からない。

「え…?水城さんヘリって…え…。」

頭の上で機械音が停止して、徐々に大きくなって来るのが

分かった。やがて姿を現したのは、軍の人間が所持しているような

モノとはかけ離れた、青色の球体型のヘリコプターだった。

「木島くんにはまだ言ってなかったけど本当は今日待ち合わせに

選んだショッピングモールの屋上にヘリを待機させてたんだけど…

まさか拐われているなんて思って無くて慌てて車の上を走ってたら

縛られてる木島くんの反応を見つけてここに来たの。」

「ちなみになんで沖縄?」

多分夏になって外出する機会が増えたので、彼女なりに

元裏の世界出身の縁者になったことで行動は制限される分、

その分のサプライズ旅行をしてくれようとしたのだろう。

「沖縄で最近何やら木島くんを狙ったグループが現れて、さっきの二人のような

感じで日本各地に手を回してるそうなの。だから新婚旅行のついでにってね?」

なるほどなるほど…僕のために旅行に専念しつつ、ついでに邪魔者の除去…

ん?新婚旅行?

「水城さん…その新婚旅行というのは…?」

凄いカタコトになっているのは分かっているが、完全にスルーできない

内容で有ることは分かった。

「裏の世界では私に恋人が出来るっていうのは完全に私が最愛の人を

選んだことつまり配偶者を選んだ事とイコールされるから。」

おっと。つまりここでお別れしてしまえば僕の人生が終了するということになる

まぁこんなに可愛い彼女に守られるなら別に分かられる気はさらさら無いが。

でも結婚となると…嫌まだ深く考える内容じゃ無いな。

「さ、行こ木島くん。ふたり旅in沖縄に。」

彼女の手を取りヘリコプターに乗り込み、しばらくして

陸が遠のいていく。

「木島くんは私との結婚は嫌?」

いきなり何を聞かれたかと思えば先程放棄していた思考が蘇った。

「まぁ…水城さんと最期までいれるならそれで良いかな。」

「…そう。」

彼女は嬉しそうに顔をニコニコさせて僕の頬を指で

つついてきた。

「じゃあ式はできるだけ小さい規模でやらなくちゃね。」

水城さんは顔が良いのに一つひとつの行動が何か可愛いのだ。

だからこそ僕の自慢出来る話は「可愛い彼女がいること」しかない。

「母さんにはまた相談しとくよ…。」

熱くなった顔を隠そうとして窓の方へ顔を向けた。

二人の夏はまだ始まったばかり。
















オマケ

「っていうかなんで僕の着替え入ってんの?

しかもなんかアタッシュケースも見覚え有るし…。」

「私の母が木島くんのお母さんの知り合いだったみたいで

旅行に木島くんを誘いたいって言ったらコレを。」

「凄い警戒心無いな。あの母親。」
















続く。

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僕の恋人は世界最強の暗殺者サマ ぷろっ⑨ @sarazawa

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