寝ても覚めても/柴崎友香
テクニックとは別のところに筆力というものがあるんだろうかと読みながら考えていた。
この著者の主人公ってだいたい似てて、あまり外向的ではない女の人で、仕事は不安定、自己主張はしないかと思いきやこだわりや考えはあり、交友関係はちゃんとあり、活発な周囲の人が引っ張ってくれ、でもやっぱり何を考えているのかいまいちわからない(一人称なのに)ことが多く、危なっかしい女の子感に読んでいてぞわぞわぞわぞわする。
この話はその危なっかしさと恋愛の盲目さが結託してぞわぞわ具合がすごかった。
この主人公でこの長編で恋愛小説か…
とちょっと挫折しかかっていたが最後は一気に読んだ。
読了の達成感の中で思い返して、むしろ恋愛小説という部類の中でこれは圧倒的に好きな方なのではという気がしてる。
そもそも自分は、共感できる~みたいなのより、突き進む主人公や展開に何もわからないまま圧倒されるのが好きだったのだ。
あと麦くんが好きだったというのもある。
話の中で直接麦が出てくる場面は短いのだけど、全部好きだった。それを主人公がそれほど感傷的に思い出すわけでもないのも良かった。ずっと麦だけただ時間が止まったみたいで。
個人的に麦が好きだったので最後まで亮平のことが「お前は麦じゃない!!」となってしまい、読むのに支障をきたした。でも主人公がどちらを選ぶかはどちらでも良かった。
「姿を消してしまった恋人にそっくりな人」
っていっても別の人じゃん、と何ら特別に思えなかったのだが、'恋人'を'推し'に当てはめてみたところ、ぞっとするほど大事件に思えてしまった自分がダメでしたね。
文字情報だけの小説で「顔が似ているけど中身は別人」を書けばそれはただの別人なんだよな。
逆に、誰が見ても別人なのに主人公にだけは同じ人だとわかる、という人物を描くこともできるわけで。
しかし、ガチで同じ顔の人なのか、主人公には同じに見えるちょっと似てるだけの人なのかを判断できずに読まされるのは一人称小説ならではだ。
ちょい役でテレビに映るマヤちゃんや、外見は変わったけど中身は同じ春代や、髪型が大胆に変わるはっしーなどが、顔は同じである麦と亮平と対比されていくのかと思ったらそうでもなかった。
なんか全体的に、そうはならんやろではなく、そうはならんのかい、が多い。この人の小説は。
最後の方で急に主人公が花の種類に詳しい人になってたけどそうだったか?
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