第33話 約束
大学卒業から三年。僕はフリーとして通訳のキャリアを積み重ねた。様々な現場で苦労もあったが着実に成長出来ていることは実感出来ていた。
僕は今、とある会社からの採用通知を目にしている。僕にとっては"特別な約束"を果たす為の場所なので何としても採用を望んでいた。
この喜びを共有すべく、美春に電話を掛けた。
「もしもし、久志くん?どしたの?」
「この前応募してたとこあったじゃん?受かったよ!」
「えっ」
美春は驚いたようで、声にならなかったようだ。電話口からは啜り泣く音が聞こえる。
「おめでとう。夢叶ったね。」
「ありがとう、まぁこれからが新たなスタートだな。」
美春が喜んでくれて胸が一杯になった。でも僕にはもう一つ、果たすべき約束がある。それを果たす為、美春と会う事にした。
「お待たせ、ホント良かったね。」
美春は満面の笑みで僕を出迎えてくれた。
僕達は少し高級な店に入った。ここは美春が前から行きたがっていたお店で、運良く空いていたので今日くらいは奮発することにした。
「あぁ、美味しい。前からここ気になってたんだよね。連れて来てくれてありがとう。」
美春は終始ご満悦でコース料理に舌鼓を打った。
一方、僕は緊張で味が分からなくなるほどだった。でも、もうやるしかない。
「あのさ、美春。」
「何?」
僕は震える手を押さえながら、青色の箱を差し出した。
美春はその箱を開け、号泣した。
「結婚してください。」
彼女は両手で涙を拭いながら、
「もちろんです。」
その瞬間、レストラン内が割れる様な拍手で包まれた。
僕達はハニカミながらそれに応えた。
帰り道、僕達は自然と手を繋ぎ、イチョウの木の間を抜けて行った。
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