第32話 復縁
あれから二年。大学卒業を控えているが、僕の中で進む道は決めている。通訳者だ。在学中に養成スクールにも通い、必要なスキルも身に付けた。卒業後はエージェントに登録してフリーに少しずつ実績を作っていくつもりだ。暫くは生活に余裕は無くなるが、大竹との約束を守るために辛抱するつもりだ。
美春との関係だが、あれから幼馴染としてちょうど良い距離を保って接している。たまに大学の側で待ち伏せされるのは怖いが。本人曰く実質彼女だから問題無いよね?(圧)とのこと。
ある日、美春に呼び出された。待ち合わせ場所に向かうと、いつに無くおめかしした彼女がいた。
「おう。急にどした?」
「何となく分からない?」
「?何だろう、まだピンとは来てないな。」
「ホント鈍い人。そろそろ幼馴染から恋人に戻りたい。やっぱり大好きなの。」
動揺したが、やっぱり美春は可愛い。この二年で嫌な部分が大分改善されているし、そんな健気な部分に惹かれている自分も居た。
「ありがとう。僕も今の美春好きだよ。やり直してくれる?」
「嬉しい…!」
美春は嬉しさのあまり涙を流した。僕はそんな彼女を強く抱きしめた。
帰り道、彼女は僕の右腕に両手を絡めてきた。
駅の改札を通過し、別れようとしたが、彼女は手を離そうとしなかった。
「どした?帰るよ?」
「一緒に久志くん家帰る。」
「いやいや、明日仕事じゃなかった?」
「久志くん家から行く。」
「ああ、泊まるのね。」
「久志くんってホント鈍い。分かるでしょ?」
「え?」
上目遣いで見つめてくる彼女の潤んだ瞳で漸く言いたいことを察した。
そっと彼女の手を握り、一緒に電車に乗り込んだ。
帰宅するなり、美春は僕の唇を奪う。ソフトな感触と甘い香りに誘われた僕は彼女にしなだれかかった。
ソープで磨きがかかった彼女のテクニックにすっかり骨抜きとなり、夜が明けるまで生気を吸い取られてしまった。
疲れ果てた僕が次に目覚めたときにはもう昼を過ぎていた。
良い匂いがしたのでキッチンに向かうと、美春がエプロンを巻いていた。
「起きたね。ちょっと本気出しすぎちゃった、ごめんね。」
彼女はイタズラっぽい笑みをしてすぐに調理に戻った。
暫くスマホをいじっていると、料理が完成したようだった。
「じゃじゃーん。っていっても簡単なやつだけどね。」
彼女は謙遜したが、牡蠣を使用したペスカトーレだった。牡蠣を使用していることに突っ込むべきか迷ったが、勘違いだったら嫌なので黙っていることにした。
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