第28話 刺激

時は過ぎ、ドラフト会議当日を迎えた。

 大竹が志望届を提出していたので、授業後に体育館に集まった。前方に映画館にあるようなスクリーンが設置され、先頭に大竹が座り、二列目以降に部員が集合した。

 大竹が緊張の面持ちで座っていたので、和ませるために話し掛けた。

 「スカウトって何球団来てるの?」

 「調査書が来たのは三球団。ライオンズ、スワローズ、ホークス。」

 「どこがいいとかあるの?」

 「ずっとスカウトさんが来てくれてたのはライオンズだから、ライオンズかなぁ。」

 話しているうちに、テレビ局の中継が始まった。テレビ中継では一位指名が読み上げられた。ここでは大竹の指名は無かった。

 ネット中継に切り替わり、二位指名が始まった。ここでも指名なし。

 三位指名でも指名なし。この段階で、大竹の表情が強張り始めた。彼の心中を察するのは難しかったので、黙って見守ることしか出来なかった。

 四位指名、五位指名でも名前が呼ばれることはなかった。会場の雰囲気も段々と重苦しいものとなってきた。五位指名が終わると、段々と選択終了する球団も出て来る。

 六位指名の時点で三球団が指名を終えた。調査書が来た球団のうち、ホークスが選択終了。

 七位指名。この時点でジャイアンツ、ライオンズ、イーグルス以外が指名を終えた。

 八位指名。巨人、楽天が指名終了。残すはライオンズのみ。

 「第八順選択希望選手、埼玉ライオンズ。大竹悠馬。投手。浦和第一高校。」

 沈み切った会場がどっと沸いた。当の大竹本人は目を見開いて呆然としていた。

 部員達が揉みくちゃにしていくうちに、段々と実感が湧いたようで、笑みが溢れた。

 浦和第一高校から初めてのプロ野球選手が誕生した。

 この後も大竹には取材があるとのことで、僕達チームメイトは一旦帰宅することとなった。

翌日の地元新聞には、昨日指名された地元選手の紹介と一言が記載されていた。

 大竹の欄に目を通すと、

 「最速百五十キロ右腕。長身を活かしたスケールの大きな投球は伸び代充分。」

 「指名をいただいて嬉しい。一日も早く一軍で活躍して親孝行がしたい。」

 大竹の立派なコメントを目にし、僕も自分の進路を叶えるべく一層の努力を誓った。

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