第26話 再戦
時は過ぎ、いよいよ最後の夏のメンバー発表が行われた。
背番号一、大竹。背番号二、南場。背番号三、僕。背番号四、吉野。背番号五、鈴木。背番号六、須永。背番号七、東。背番号八、石井。背番号九、廣政。
僕も何とかレギュラーに入ることが出来た。何だかんだでまだ夏大会には一度も出場出来ていないので、気合が漲っていた。
一回戦、二回戦と順調に勝ち抜き、三回戦の相手は清光学園。甲子園出場実績もある強豪だ。
先発の大竹は、緊張と気合が入り混じっている様子だった。二回戦までは東が完投しており、初登板となるからだ。
試合が始まると、大竹の制球が定まらない。緊張が悪い方向に出ているようだ。
ワンアウトも取れず満塁となったところで南場がタイムをかけた。僕もマウンドに向かった。
「もうど真ん中に投げちゃえ。それで打たれても俺らは構わない。打って返すから。開き直れよ!」
南場がゲキを入れ、大竹は少し落ち着きを取り戻したようだった。
そこからの大竹はストライクゾーンに快速球を集めて打ち取り、無失点で凌ぎ切った。
この勢いで先制点…となるほど相手も甘くなかった。相手先発の緩いカーブと直球のコンビネーションにタイミングが全く合わず、無得点。
その後も互いに打ち崩せず、延長戦に突入した。
浦和第一は大竹に代えて東を投入した。
東は一年とは思えない老獪なピッチングで、危なげなく抑えた。
裏の攻撃。一点取ればサヨナラだ。
先頭は僕。この夏は未だノーヒットだ。
相手先発の球に全くタイミングが合わず、ツーストライクまで追い込まれた。
一旦打席を外し、一呼吸置いた。
落ち着きを取り戻し、無理に安打を狙わず、粘ることにした。
ストライクゾーンギリギリはファール、外れれば見逃し。気付けばフルカウント、球数は十球を超えた。相手投手も目に見えて消耗していることが分かった。僕はその様子を見て、次の球をフルスイングすると決めた。
見立て通り、次に来た球はすっぽ抜けたカーブがど真ん中に来た。
フルスイングした打球は、青空に沿って流れていった。
僕は片手を突き上げ、喜びを表した。背後からはチームメイトの歓喜の声がした。
ホームインすると、南場が思い切りハグしてきた。続いてチームメイトに揉みくちゃにされた。
次の相手は加須学院だ。全国制覇の経験もある強敵だ。ただし、今の勢いならばどうなるかは分からない。
帰りの道中、既に次に目が向いていたが、取り敢えず今日は勝利の余韻に浸ることにした。
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