第23話 失踪
野球の方はオフシーズンに突入し、トレーニングや週末の室内練習がメインとなった。
高校野球の残り期間が短くなっていることを実感していたので、悔いのないよう懸命に取り組んだ。
いつもとおりにトレーニングに取り組み、帰宅すると、母が小走りでやって来た。
「久志、美春ちゃんがずっと帰って来てないんだって。あんた何か知らないの?最近も仲良くしてたじゃない。」
「その話初めて聞いたよ。行方とかは分からないよ。」
居なくなるキッカケは多分僕だ…なんて言えるわけもなく、はぐらかすしかなかった。
「あんたやけに素っ気ない反応だわね。やっぱり知ってるでしょ?」
母は勘が良く働く人物だ。僕が何か隠していることを勘付いたようだった。
「何か隠していることがあるなら言いなさい。」
真っ直ぐ僕を見つめながら放たれた言葉にはそれ以上の圧があった。
「実は…」
観念した僕は、事の顛末を洗いざらい話した。母は黙って頷いていた。
「そっか。事情は分かった。あんた、美春ちゃんの連絡先分かるよね?別れる別れないは置いといて、あんたしか説得は無理よ。一旦連絡しなさい。」
僕はその場でスマホを取り出し、美春に発信した。しかし、反応は無かった。
「今後あんたに連絡してきたら教えて頂戴。」
僕に背を向けると、母は美春の母に連絡し始めた。
それにしてもアイツは何処に行ったのだろうか。別れたことが発端ではあるものの、足取りの手掛かりは皆目見当がつかなかった。
翌日、昼休みにスマホを見ると、母からメッセージが入っていた。
「美春ちゃん帰って来たって。あんたのことは特に話していなかったようだけど、また連絡はしてあげて。」
一先ず無事だったようで安心した。しかし、美春と連絡取るのは気が引けた。よくよく考えたら関わるなと言ったのは僕の方なのだ。一旦この件は忘れることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます