第15話 爺ちゃん
急いで着替えて、リビングのドアを開くと両親と祖父がすき焼きを囲んでいた。
「遅いわねアンタ、本当に練習かい?」
母が意地悪な顔で僕の顔を覗き込んだ。
「れ、練習だよ。」
僕は動揺を隠す為に無愛想に呟くと阻塞さと席に着いた。
「久志、久しぶりだな。今日は頑張ってたな。」
祖父は既に酒で紅く染まった顔を崩していた。
「ありがとう。爺ちゃんにいいとこ見せられて良かったよ。」
「そうかそうか。さぁ、まだ肉は沢山用意してるからどんどん食べなさい。」
僕はお言葉に甘えて、お肉を口に運んだ。
甘辛く味付けされたお肉と絡みあった生卵のハーモニーが僕の満足感を高めた。
結局用意されたお肉は美味し過ぎてあっという間に平らげてしまった。
食べ終える頃、祖父と母が話し込んでいた。
「そう言えば、お隣の山本さんとこ挨拶したんだが、美春ちゃんいなかったな。暫く会ってなかったから覚えてるか分からないけど。」
「あぁ、そういえば美春ちゃんや久志が小学生の頃はお父さんと良く遊んでたものね。まぁ元気でやってるよ。詳しくは久志が知ってるんじゃない?」
母からのキラーパスにより、祖父は僕に話し相手を変更した。
「久志、美春ちゃんは元気か?」
「ま、まぁ元気かな。」
「それだけ?なんか最近やたら仲良さそうだけど?」
「そりゃ幼馴染だからな。そうだ、爺ちゃんはいつまで埼玉にいるの?」
「明日の午後には帰るよ。」
「そっか。また部活引退したら遊び行くね。」
「分かった。楽しみにしておくよ。」
何とか話題を逸らすことに成功した僕は、急いで食器を片付けると、逃げるように浴室へ向かった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます