第14話 捕食者

荷物をまとめて、スマホを見ると、美春からメッセージが入っていた。

 「久志くんおめでとう!カッコ良かったよ。」

 どうやら観に来てくれたようだ。

 「ありがとう!またすぐ試合あるからゆっくり休むわ。」

 「何もしないから会いたい。」

 「何もしないって如何にも怪しい笑」

 「いいから会うの!決めてんの。美春のこと嫌いなの?最近会ってくれないんだもん。」

 「分かった、落ち着いて。じゃあいつもの公園ね。」

 結局美春の勢いに押されて公園に向かった。

 到着すると、既に美春が準備万端と言わんばかりに待ち構えていた。

 金色に染まった髪に茶色のカラコンが街灯に照らされてよく映えていたので、その姿は宛ら獲物を待ち構える野生生物だった。

 その野生生物は僕を視野に入れると仕留めに来た。

 僕はあっさりと捉えられると、彼女の欲望の餌食となった。

 「今日格好良かった。」

 彼女は貪り尽くした亡骸に向けてそう呟くと、頬を赤らめた。

 「ありがとう、美春にいいとこを見せる為に頑張って来たから形になって良かったよ。」

 僕は先程までとは打って変わってか弱くなった彼女の肩を抱き寄せた。

 香水の優しい甘い香りに包まれた彼女は、一層可愛らしく見えた。

 僕は吸い寄せられるように彼女の唇に口付けした。…が、携帯の着信が鳴り、現実に引き戻された。

 「アンタいくら何でも遅いよ。早く帰って来なさい。今日はお爺ちゃんが家に来てるの忘れたの?」

 完全に忘れていた。今日は祖父が長野から来ていて、試合を観に来てくれていたんだ。僕は何を誘惑に忠実に動いていたんだ。

 「分かった、ごめん急いで帰るよ。」

 電話を切り、彼女の方を振り向いた…と同時に彼女の唇が眼前に来ていた。

 暫くの間吸い寄せられ、ゆっくり顔を離すと、彼女は頬を膨らませて拗ねてしまっていた。

 「行っちゃうの?」

 「うん、またすぐ連絡するから。」

 名残惜しかったが、その気持ちを抑えて彼女の頭をポンポンした。少し頬を緩めてくれた。

 彼女と別れると、自宅に向け急いだ。

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