第8話 衝突

翌日からの練習では、これまで以上に努めて声を出して取り組んだ。但し、チームの為と言うよりは、自分の為だった。落ち込んでいると思われなくないが為の強がりでしかない。

 練習が終われば誰よりも先に校舎を出て、チームメイトとの接触も絶った。

 そんな調子で大会前日を迎えた日、いつもの様に一人でペダルを漕いでいると、後方から聞き覚えのある声がした。

 「おい、久志!ちょっと待て!」

 南場が息を上げながら僕に迫ってきていた。

 丁度信号が赤になっていたために、南場は僕に追いついた。

 「最近お前おかしいぞ。練習中のテンションもわざとらしいし、気付いたら消えてるし。」

 「別にいいだろ。練習サボっているわけじゃないし。」

 「良くねえよ。皆気付いているし、気を遣われているぞ?」

 「だから何だよ?あ?」

 何故だか僕はヒートアップして南場を睨み付けていた。

 南場も応戦して睨み返してきた。

 「お前なぁ。メンバー入れなかったから悔しいのは分かるけど、チームの輪は乱すな。周りが迷惑なんだよ。」

 僕は南場の胸倉を掴んでいた。南場は僕から全く目線を外さなかった。その眼は無形の圧力となって僕の手を跳ね返した。

 「殴るなら殴れ。その代わり辞めちまえ。今のお前は必要無い。」

 南場は僕の手を振り解くと、阻塞さと自転車を走らせていった。

 小さくなっていく南場の背中を見つめていたが、次第に視界は曇っていき、気が付けばその姿は消えていた。

翌日、校舎の廊下で南場と顔を合わせたが、南場は下を向いて僕を見ていないかのように振る舞った。正直僕も気まずかったのでその方が楽だった。

 部活の時間になっても僕は一人ポツンと佇んでいた。いつもキャッチボールをする南場は同級生の今井とキャッチボールをしていた。相手が居なくなったのでコーチの高橋さんとキャッチボールした。

 「久志、いつも南場なのにどうした?何かあったのか?」

 「まぁ色々と…」

 高橋さんも察したのか、それ以上は聞いてこなかった。

 その後のメニューは諸々の雑念を振り払うために目の前のプレーに集中した。

 練習後にサッサと帰るのは変えなかったが、練習自体はしっかりと打ち込めたので前日までの消化不良感は無かった。

 途中、喉が渇いたので目の前に見えたコンビニに立ち寄り、スポーツドリンクを購入し、店前で喉に突き刺した。ドリンクが内臓に染み渡る感覚があり、すっかり体力は回復した。

 気を良くして再度出発するために自転車のサドルを踏み締めた時、背後から視線を感じた。

 恐る恐る振り向くと、目がチカチカするほど真っ金金の髪のギャルが何故か唇を尖らせて僕を見つめていた。

 見覚えはある気がしたが、恐怖が勝ったため、急いでペダルを漕いだ。

 暫く夢中で漕ぎ、自宅が近くなった頃に振り返り、追ってきていないことを確認すると、安心して速度を緩めた。

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