第6話 三者面談
僕達は美春宅まで歩き、インターホンを押した。
「はーい。って久志君?どうしたの?」
「お久しぶりです。美春とバッタリ会ったので一緒に来ました。」
美春のお母さんはビックリした様子だったが、すぐに玄関の扉を開いた。
「あら、久志君、部活帰り?」
「そうですね、まぁぼちぼちですね。」
「あらそう…」
彼女の視線は直ぐに僕から美春に移った。しかし、美春はその視線を避けるように俯いていた。
「…っ久志君、折角だから上がってらっしゃい。」
美春のお母さんは気まずい空気を打破するように僕達を手招きした。
久しぶりに入った美春宅は、幼い頃からあまり変わっていなかった。変わっているとするならば、美春の見た目くらいか。
リビングに案内され、麦茶を出された。喉が乾いていたし、緊張もあったので、一気に飲み干した。
隣に目をやると、美春は相変わらず俯いていた。
暫しの沈黙の後、美春の母がゆっくりと席に着いた。
「久志くん、お久しぶりね。どうして美春と一緒してたの?」
「ええっと、偶々公園を通りがかったら美春が元気のない様子で屯していたので、思わず声を掛けたんです。」
「あらそう。最近は美春は全然帰ってこないから、お父さんと一緒に心配してたのよ。」
「そうだったんですね。まぁ、事情はよく知らないですけど、仲直りしてくれたら嬉しいです。」
久志はそう言って美春を見たが、美春はまたも俯いたまま何も語ることはなかった。
「ちょっと美春。あなたが遊びたい気持ちも分かるけど、今後の進路のことが心配なのよ。あなたは一体どうするつもりなの?」
「…だっていいじゃん…」
「ん?何て?」
「おしゃれしたっていいじゃん!好きな髪型にして、着たい服着て、何を迷惑かけたって言うの?」
「迷惑をかけているわけじゃない。心配なのよ。お願い、分かって。」
ヒートアップする二人の様子を見兼ねて、僕も会話に入ることにした。
「い、今のところさあ、成績はどんなもんなの?」
「どんなもんて、ぼちぼちよ。」
「何言ってるのよ?何個も赤点あるのに。」
美春の顔に怒気を感じたので、慌ててフォローした。
「まぁまぁ。これからは頑張るもんな?」
「うん…」
三人の間に暫しの沈黙が流れた。結局明確な結論は出ずに帰ることになった。
「今日はありがとうね。また遊びに来てちょうだい。」
美春のお母さんは穏やかに微笑みながら見送ってくれたが、美春は何か言いたげな表情で此方をじっと見つめていた。
外はすっかり静まり返っていた。自転車を引きながら、今日の出来事を振り返っていた。本当は自分のことで精一杯だったが、美春のことで頭が一杯だった。
考えているうちに、自宅に到着した。もう考え過ぎるのは辞めよう。気持ちを切り替えて風呂に入った。
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