第5話 美春2
県大会当日。今日の相手は複数の学校の合同チームだった。
試合は初回から順調に得点を重ねていき、五回コールドで勝利した。
チームは学校に戻り練習に戻ったが、僕は翌日の試合のために次の試合のスコアラーとビデオ撮影を任された。
試合まで少し時間が空いていたので、持参したおにぎりとお茶で昼食を済ませた。
昼食を済ませてすぐに試合が始まった。この試合の勝者が翌日我が校と対戦する。
試合は一進一退の攻防で、延長戦に縺れ込んだ。
延長に入っても互いに決め手を欠き、延長十二回に突入した。
その時、後ろから肩を叩かれた。
「まだ続いてるんだな。練習はもう終わったよ。」
南場がニヤニヤしながら話しかけてきた。恨めしそうに睨んだが、彼の背後には数人の人影が続いていた。
「三井、御苦労さん。これ飲みな。」
監督がスポーツドリンクをヒョイと投げてきた。
僕は一礼すると、そのドリンクを一気に喉に突き刺した。
全身に水分が行き渡る感覚に浸る暇もなく、十二回が始まった。
先頭打者が二塁打で出塁すると、次の打者が内野ゴロの間に三塁に進んだ。
投手はスクイズを警戒する余り、四球を出してしまった。
次の打者への初球。スクイズを警戒して投げた高めのストレートがすっぽ抜けた。
打者は見逃さずに外野に大飛球を飛ばした。
打球は外野の頭を大きく超え、フェンスに直撃した。一塁ランナーも生還し、先攻チームが二点リードを奪った。
裏の攻撃。先攻側の投手が気迫の力投を見せて、三者連続三振でゲームセット。
ようやく帰れる。安心した僕は素早く撤収作業を終え、スコアブックとビデオのデータを監督に引き渡した。
帰り道は南場が途中でアイスを奢ってくれた。
南場と別れた後、美春がいた公園に差し掛かると、昨日と全く同じ場所に美春が座っていた。
公園に自転車を停め、美春の隣に座った。
前日の美春は夜中に電灯越しに見たため、黒光りしていたが、この日は夕日がバックだったため、淡く柔らかい印象を受けた。
「美春、何でまたここに?」
「…家から追い出された」
「は?昨日帰ってから?メイクとかのことか?」
「まぁ、それだけじゃないけど。なんか家にいるのはしんどい。」
「彼氏のとこ行かないのか?」
「別れた。」
「はあ?色々ありすぎて理解が追いつかないよ。」
「前から喧嘩は多かったし、いつかはこうなると思ってた。だから別にいいの。」
「美春がいいならそれでいいと思うよ。でもご両親とは仲直りした方がいいよ。泊まるとこ無いでしょ?」
「…」
美春からは返事は無く、俯いてしまった。
「よし分かった。一緒に話しに行こう。誰か一人挟んだ方が話しやすいでしょ。」
「えー。何かヤダな。」
「失礼な。」
僕達は目を見合わせて大笑いした。
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