第3話 愚痴

結局僕は野球部に入部し、雑用続きの日々であったが、必死に食らいついていた。

 本日のメニューも終わり、全員でベンチ前に集合した。本日は夏の県大会のメンバー発表。

 当然呼ばれることなく終了し、僕を含むベンチ外メンバーは明日から応援練習もすることになった。

 帰り道。南場と自転車を漕ぎながら帰るのだが、今日はいつものバカ話とは違い、明日以降の動きに関して愚痴を言い合った。

 「南場さぁ、明日からダルくね?」

 「そうだなー。野球部なのに応援の練習とか意味分からんもんな。」

 「明日から一緒にサボらんか?」

 「いやぁ、まだ一年なのにそれヤバくね?俺らヘタクソなのに変に反抗したら問答無用で退部じゃん。」

 「ま、まぁな…」

 南場から正論で諭されてぐうの音も出なくなってしまった。

 それからは暫く無言の時間が続いた。沈黙の間をカエルの合唱がつんざく。

 南場の家が近づいてきた。

 「じゃあそろそろ着くからまたな。」

 南場は軽く手を上げて小道に消えた。

 一人夜道を走り抜けながら、気持ちに整理をつけようとしたが、中々上手くはいかなかった。

 応援なんてただメガホンを叩いていればいいだろ。誰が素人のダンスなんか見たいんだ。

 いつもより早く自宅に着いた僕は、その薄汚れた心を洗い流すために、浴室に直行し、シャワーを浴びた。

 シャワー後に湯船に浸かると、冷静さを取り戻した。

 そもそも入学したばかりだし、別に一ヶ月ばかり我慢すればまた練習できるし我慢しようか。

 スッキリした気持ちで浴室を出て、牛乳を体内に流し込んだ。

 布団に入り、携帯を眺めると、南場からメールが入っていた。

 「今日の話だけどさ、やっぱり良くないと思うよ。まだ先は長いし、今は我慢だぜ。」

 僕は無言で頷くと、そのまま眠りに落ちた。

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