番外編⑤
◻︎◇◻︎
王宮へどうやって帰ったかなんて覚えていない。
気がついたら自分の部屋にいて、抜け殻になってしまったかのように、喉が焼けるように熱くなるほど度が高いウイスキーを煽っていた。
ベロンベロンに酔いが回って、吐いて、飲んで、なんだか頭がスッキリしてきた。
「馬鹿ジル………、うぅー、ばかぁ〜、あほぉ〜!!」
———ガンッ!!
ロックの美しいガラスコップを机に叩きつけたあたしは、ヘロヘロと頭が回っているのに気がつき、苦笑する。
(これはいくらなんでも飲みすぎね)
限度を知らぬヤケ酒に嫌気がさす。
「はああああぁぁぁぁぁ………、」
こぼれ落ちた大きなため息に、もう1度大きなため息をつきたくなった瞬間、部屋にノックの音が響いた。
「しつれ、アリエルさま!?」
次期王太子妃にしてあたしの侍女エルナ・ラ・システィーナの素っ頓狂な悲鳴が、扉の開いた瞬間に響く。
「す、すごいお酒の匂い………、」
こぼれ落ちたエルナの声に反応しようとしたあたしは、かんぱーい!と言った感じでウイスキーを再び並々と注いだロックを大きく掲げる。
「………あ、アリエルさま………………、そのー、………国王陛下より至急謁見の間に来るようにとのお達しが………、」
「パパがぁ?あははっ!たのしそー!!」
ウイスキーのボトルを抱きしめて立ち上がったあたしは、クルンクルンとその場で回る。
「身だしなみは………、御髪のみで良さそうですね。ささっと整えさせていただきますわ」
超特急でエルナによって身だしなみが整えられていくのをどこか遠くの出来事のように眺めながら、あたしは「ヒック」というしゃっくりをこぼす。
白粉で隠してなお明らかに真っ赤な肌と、とろんとした瞳を見つめていたら、あっという間に支度が終わった。
エルナに支えらるようにして謁見の間に向かうために歩くと、身体を動かしたせいで酔いが回った。
「………気持ち悪っ、」
「………………自業自得としか言えませんわ」
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