番外編④
「ねえ、ヴァネッサはぬいぐるみが好きなんですか?」
「い、いえ。何故でしょうか?」
「えー、だっていっつもショーケースの前であのおっきなくまさんのぬいぐるみ見てるじゃないですか」
「っ!!」
顔を赤くした彼女もまた可愛い。
凛とした雰囲気とのギャップがたまらなく可愛い。
「わ、私なんかにはあんな可愛いもの似合わない。あぁいう可愛いものは、シリルのような人が似合うものだ」
「僕だけじゃなくて、あなたにもお似合いですよ?」
にっこりと笑った僕に、ヴァネッサは苦笑した。
どうやら本気にされなかったようだ。
「にしても、表情が暗いですね。何かあったのですか?」
「………母が結婚しろとうるさくて………………、父や兄たちが庇ってくれているのでどうにかなっているけれど………って、あなたに愚痴っても仕方がないね。ごめんなさい、毎日のようにお話ししているから、少し甘えてしまったようね」
弱ったように苦笑するヴァネッサも可愛い。
でも、ちょぉーっと不味いこと聞いたかもな………。
………この際、彼女の気持ちが伴わなくても………………、いや、でも………………………、
「あぁ、そういえば、あなたには婚約者がいるのかな?」
「え?」
ものすごく真面目な表情で聞かれて、僕は呆然とする。
「あなたのような可愛い“レディー”ならば、婚約者との良い過ごし方も知っているのではないかと思って………、3ヶ月後にお見合いが決定してしまっているようだから、是非とも良い方法をご教授できれば嬉しいと思ったのだけれど………、図々しかったよね。ごめんなさい」
頭を下げた彼女に、僕は一瞬思案する。
(うん、後から僕の可愛さにメロメロにさせればいいよね?)
突拍子もないことを考えられているなんて露程も考えていないであろうヴァネッサに、僕はにっこりと微笑んだ。
「1ヶ月後に王宮で行われる夜会に一緒に行きませんか?」
「え………、」
「婚約者との過ごし方、知りたいのですよね?」
必死になってこくこくと頷くヴァネッサには悪いが、ここは悪い僕に騙されてもらうとしよう。
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