番外編④
▫︎◇▫︎
———ヴァネッサ・ラ・ロエルミナ
代々近衛騎士を輩出する騎士家の名門中の名門たる伯爵家の4人兄妹の末っ子にして長女たる、将来有望な女騎士の名前だ。
艶やかな漆黒のストレートな長髪に、サファイアを連想させる藍眼を持つ彼女は、スラリと伸びた長身に、慎ましやかな女性美、そして何よりも圧倒的な中性的な美貌を持つことで有名らしい。同時に、溺愛属性たる父や兄たちに囲まれて育ったゆえに、色恋に鈍感すぎ、そして無意識の女たらしであることから、多くの貴公子に敵対視されているとかなんとか。
彼女に出会ってから1年という短くも長い月日が流れて、やっと僕は彼女にお名前を覚えてもらえた。昨日やっと、「シリなんちゃらさま」から脱却することに成功したのだ。長い長い道のりだった。週に3回以上挨拶をして、その度に名乗ったのに、名前を覚えてもらうだけで1年もかかるなんて思わなかった。
今日も姉さまに連れられて街に繰り出した僕は、姉さまには秘密で、いや、3日前にいじられたから多分バレているけれど、姉さまには秘密という体をとって、美しい男装伯爵令嬢ヴァネッサの元に挨拶に向かう。
「こんにちは、ヴァネッサ」
「あぁ、こんにちは。えぇーっと………、シリル?」
「はい、シリルです」
こくりと微笑みながら頷くと、彼女の顔が赤く染まった。
最近気がついたことなのだが、彼女は相当な可愛いもの好きであるらしい。
僕が意識して可愛らしいお洋服を着たり、小物を持ったり、ポーズを取ったりすると大変嬉しそうな、幸せそうな反応を見せてくれる。
うん、ホントにめちゃめちゃ可愛い。
チューしたい。
デロンデロンに甘やかしたい。
僕なしじゃ生きられないようにしたい。
まあ、それは父さまみたいな合法犯罪者に片足を突っ込みそうだから考えないようにするとして、やっぱり僕は彼女が好きだ。
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