番外編③

 ———シャン、


 耳元で音が響いたと思った瞬間、背後でどさりと人が崩れ落ちる鈍い音。


 真っ白なレースにピシャリと血が跳ねている状況で、心の底から幸せそうに微笑んだシリルは、あたしが状況を判断しかねているうちに一気に切り掛かってきた5人相手に大立ち回りを披露する。


「あははっ!!あはははっ!!僕と遊んでくれるの?たったそれだけのために、こんなにも嬉しい贈り物をくれたの!?あははっ!!あはははっ!!ねぇ、もっと僕と遊んでよっ!ほらほらっ!!」


 楽しげな声と共に状況を理解したあたしは、大きな溜め息をついた。


(………悪い癖が出たようね)


 幾人もの人が襲ってくる状況と先程シリルにナンパした男が宙を舞う状況を見つめながら、あたしはくちびるに音を乗せる。


「ざまぁ」


 シリルは見た目だけならば誰よりも可憐な美少女であり、ひ弱な乙女なのだが、その実は戦闘狂の最強少年。

 にっこりと楽しそうに笑ったシリルは、十数人目にもなる人間を切り倒しながら満面の笑みを浮かべてサーベルを仕込んである日傘をぶん回す。


(………この様子を見たら、みんながあたしの方が女らしいと認めるんじゃないかしら)


 フリルたっぷりのスカートを翻し血飛沫を浴びるシリルに遠い目をしながら、あたしは溜め息をついた。

 そして袖に隠している暗器を手に取る。


「死ねっ!!」


 背後から飛びかかってきた愚か者を成敗し、にっこり微笑む。


「誰に死ねって言ったのかしら?」


 「まさかあたしじゃないわよね?」という複製音付きでお送りすると、ポカンとした表情をされた後、ものすごく怖がられた。

 怖がるべき相手はあたしじゃなくて、あんたらが見惚れてるシリルの方だと思うよ?

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