番外編③
▫︎◇▫︎
エイベルとエルナが熱い抱擁を交わしていた頃、アリエルことあたしは弟に群がる悪い虫を駆除していた。
「で?だから?あたしの大事な弟に手を出したと?」
「ひぃっ!!」
後ろに可憐な弟を庇ったあたしは、街のチンピラに思いっきりガンを飛ばす。
「ご、ごめんなさあぁい!!」
思いっきり走り去る男の背中をひっ捕らえようとした瞬間、うちの可愛い可愛い末っ子シリルが首を小さく横に振る。
覚醒遺伝の淡いプラチナブロンドの髪が、ゆるゆると横に揺れる。お母さま譲りの美しい縦ロールがぽよぽよと跳ねるのを見つめながら、あたしは小さく溜め息をついた。
見上げてくる灰色の瞳にはしっかりと化粧が施されていて、女のあたしよりもしっかりと女の子らしい。
一言で簡潔に言うのであれば、弟のシリルの方が圧倒的美少女だ。
(………羨ましい)
心の中で一瞬湧いて出てしまった妬みを首を振ることで消したあたしは、苦笑しているシリルに首を傾げる。
今日もパステルピンクのフリルとリボンたっぷりの街娘風ドレスがよく似合っているシリルは、ゆっくりと口を開く。
「兄さまたち、上手くいってるといいね」
「あれだけお膳立てしてやったのだから、上手くいっているに決まっているわ」
「そうかなぁ?かれこれ15年ものだよ?僕が1歳の頃からアレだよ?たったアレだけでうまく行くかなぁ?」
「………いくわよきっと」
シリルの素朴な意見が胸にグサグサと刺さる。
「まあ、とりあえずお店に———、」
シリルが言葉を言い終える前に、いきなりフリルたっぷりのゴスロリ日傘を振り回す。
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