番外編③

「えっと、その、………わ、わたくしは、………………エイベルさまのことを好ましく思っておりますのよ?」

「え………、」

「………アリエルさまに言われたのです。態度では伝わらぬこともあると。だから、………い、言ってみようかなと………………」


 ぶわりと赤くなった顔に頬を緩めると、エルナは慌てたように両手をぱたぱたと暴れさせ始めた。


「ふ、不愉快にしてしまいましたよねっ!?ご、ごめんなさいっ!!全部、一言一句、記憶から消してください!!」

「無理だな」

「ぴえっ!!」


 半泣きになったエルナに俺のくちびるが緩む。

 鉄仮面を身につけていると言われるほどに表情筋がお仕事をしない俺の顔はどうせ無表情だろうが、それは仕方がない。


(“態度では伝わなない”か………。『背中で語れ』と言いまくった挙句、奥方に捨てられたどこぞの不器用な将軍に言ってやりたい言葉だ)


 エルナの頭に手を置いた俺は、彼女に呟く。


「———俺は、お前の全てが愛おしい」


 1度切り出して仕舞えばそこからは簡単だ。


「普段は澄まし顔なのにお菓子を食べる時だけ頬が緩むところとか、髪の毛がウェーブを描いているのを気にして必死にお団子にしてるところとか、桃色の瞳が本当はあんまり好きじゃなくて魔法で色を変えようか本気で悩んでいるところとか、紅茶を淹れる時少し鼻がすんと動いて匂いに癒されているところとか、アリエルの無茶振りに苦笑しながら付き合うところとか、………全てが愛おしい」

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