番外編③
▫︎◇▫︎
「うおえええぇぇぇっ、」
黄金の瞳に涙を溜めて桶の中に胃液を溢しながら、俺は愛する婚約者に背中を撫でられていた。
(………情けない………………)
この様子を見た瞬間、先程部屋を出て行った双子の姉アリエルが、淑女であるのにも関わらず、恥ずかしげもなくお腹を抱えて笑っている様子が頭をよぎった俺は、悲壮感を捨てイラっとする。
(………何であいつばっかり………………!!)
自分も強い身体が欲しかった。
いつも元気に走り回るアリエルが羨ましい。
数十分先に生まれただけの片割れが、妬ましくて、羨ましくて、仕方がない。
「エイベルさま?」
はちみつ色のウェーブのかか髪を耳にかけながら、薄桃の瞳を細めた美少女であり、姉のメイドであり、婚約者たる子爵令嬢であるエルナ・ラ・システィーナがふわふわした声をあげた。
「………ごめん、エルナ」
「お気になさらず」
義務的な声。
変わらない表情。
俺の心はズーンという効果音すらも可愛らしく感じるぐらいに大きく沈み込む。
「………エイベルさま、わたくしには気を使わなくていいのですよ?」
「?」
「………吐いてしまうということは、わたくしにストレスを」
僅かに寂しそうな瞳をしたエルナに、俺はばっと顔をあげた。
「違う!!」
いきなり起き上がったからか、エルナの顔が目の前にあった。
顔が近いと自覚した瞬間、エルナの顔が真っ赤に染まり上がり、くちびるが何かを紡ごうとする。
アリエルの言葉は全部聞き逃したいが、エルナの言葉は一言一句聞き逃したくない俺は、エルナのくちびるの動きを読み取る。
『顔面偏差値が神』
………………?
『まじイケメン、コレだけでご飯3杯は食べられる』
………………………………??
「えっと………、エルナ?」
小さく声をあげた俺に、エルナは慌てたように澄まし顔を作る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます