番外編③

▫︎◇▫︎


 私の大事な宝物———。


 ノエルと私の、かけがえのない宝物———。


 ———容姿に悩む、賢く元気な可愛い可愛い長女。


 ———私の胃の弱さを引き継いでしまった、次期国王の愛おしい長男。


 ———子供たちの中で最も可憐な容姿を持つ、女装が大好きで戦うことが得意な優しい次男坊。


 みんなみんな、私の大事な宝物———。


 比べようのない宝物———。


 この子たちが初めて私のお腹にやってきた時、私は初めて母になった。

 初めて、ママの気持ちが分かった。


 胃が弱くても、社交性がなくても、元気に育ってくれればそれでいい。

 それだけで幸せ。


 王妃として、国母としての私ではなく、三児の母として、私は今日も引き攣った微笑みを浮かべる。


「ねぇ、ノエル。私、どこで育て方を間違えてしまったのかしら?」


 私の視線の先には、魔法のランスを握り周囲の空気を切り裂く戦闘を繰り広げる、可愛い可愛い長女と次男。

 そして、胃痛によって地面で身悶えている愛おしい長男。


「大丈夫だよ、シェリー。君は何にも間違っていない」


 ノエルの穏やかな微笑みに遠い瞳をした私は、彼に額のキスを受けながら今日も幸せを噛み締める。


 ———元気が有り余って喧嘩っ早くて、隣国の好色王子さまを殴ってしまった社交界の女帝たる長女。


 ———胃痛によって公務をよく欠席し、お見合いの席であまりの緊張によって血を吐きながら失神してしまった病弱王子の長男。


 ———留学先で皇太子さまに惚れられ曖昧な態度を取り続けた挙句、皇太子さまとその婚約者の婚約破棄騒動を起こさ、挙句婚約者さまが泣いたからという理由で決闘を行った、戦闘狂の次男坊。


 私の可愛い子供たち———。

 私の可愛い問題児たち———。


(今日はどんな問題を引き起こすのかしら———………、)

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