第15話
▫︎◇▫︎
ぼろぼろと涙の溢れる灰色の瞳を隠すことなく、私は泣きじゃくる。
「………ごめんなさいね、シェリル嬢」
王妃さまの言葉に、私は絶望する。
「今宵この瞬間を以て、ノエル・ルーティ、否、ノエル・フォン・メッテルリヒをメッテルリヒ王国第50代目国王とする!!」
国王さま、否、先王さまの言葉に、私は崩れ落ちた。
周囲に拍手の嵐が起こり、皆がノエルを祝福している。
———パンっ!
華やかな拍手を破るような鋭い音が響き、拍手が鳴り止む。
貴族たちや先王夫妻の困惑顔の中、ノエルだけが青筋だった不機嫌丸出しの顔で凶悪に笑っている。
「俺、王になるとは一言も言ってないぞ」
『え………、』
広がる不安と唖然に、私もおろおろとしてしまった。
ノエルが王にならないと言う選択肢などここには残っていないと言うのに、ノエルは何を言っているのだろうか。
「つーか俺、昨日付けでマルゴット公爵家の婿養子だし、婚姻届は最高神に提出してるから王家へ籍を戻すことは不可能」
「はい?」
素っ頓狂な声を上げたのはもちろん私。
彼とは婚約者の関係であって夫婦の関係ではない、………はずだ。
「罪人として北の森で放浪している、王族籍の叔父君でも連れ戻したらどうだ?それとも、王家の名をマルゴット公爵家に譲るか?まあそもそも、マルゴット家の方が王家直系の血筋なんで正当な王家に戻るってだけだけど」
意味のわからないワードがぽんぽこぽんぽこ出てきていて、私の頭の中が混乱してきてしまった。
「………の、ノエル?」
困ったような声をあげると、ノエルにぎゅーっと抱きしめられた。
あったかい………。
ぎゅーっと抱きしめ返すと、額や髪に優しいキスが落とされる。
とっても落ち着く………。
(ずぅーっとこんな時間が………、)
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