第14話
▫︎◇▫︎
ノエルと出会ったのは私がまだ9歳の頃だった。
いつも通りお部屋にこもって作業をしていると、パパが慌てたように帰宅してきて、傷だらけで死にかけていたノエルを連れて帰ってきた。
幾人かの使用人がノエルの瞳を見て驚愕しているのを横目に、私は何故かボロボロなのに美しい彼に惹かれていた。
ママと一緒に一生懸命に手当した。
胃が弱ってしまった彼のために前世の知識を駆使した胃に優しいご飯を作って与えたり、彼のお洋服を縫い上げたりした。
彼のお洋服を作るのはとっても楽しかった。
ノエルは私の理想そのものだった。
創作意欲は尽きることなく、私の作るものはノエルのものが中心になっていった。
ノエルは警戒心の強い猫みたいな子供だった。
私が作ったものに警戒しながらもパクッと食いついて最終的に瞳を輝かせる様を見るのがとても好きだった。
友愛が親愛になり、親愛が恋愛になるまでに時間は掛からなかった。
12歳の時、ノエルは私に求婚してくれた。
まるで物語の一説みたいだった。
我が家の薔薇園の奥にある東屋で片膝を付いて、葉っぱの擦り傷いっぱいの手で四つ葉のクローバーで作った指輪を私の左手の薬指にはめてくれた。
とっても嬉しくて、私は泣いてしまった。
そんな私をおろおろと見ている彼が愛おしくて、私は彼の頬に口付けた。
彼の真っ赤な顔が可愛くて、愛おしくて、私はその日彼がくれた指輪を綺麗に押し花にしてドーム型のハーバリウムに彼がくれた形のまま保存した。
ハーバリウムは今も私のお部屋に飾られている。
ノエルはそれを見るたびに平然とした顔をしているが、耳を真っ赤に染め上げる。
大好きで、愛おしくて、何よりも手放したくない私の唯一。
(———お願いだから、私の指を切り落としてもいいから、………だから、置いていかないで。私を、ひとりぼっちにしないで………………、)
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