第13話
「さすがは義父上。お仕事が早いな」
国王夫妻が入城してからもシェリルの髪を撫で続けているノエルは、ぼそっと呟いた。
「ノエル、冷静に言っている場合じゃないわよ。そうなれば………、」
「ダディ!じゃあ王さまは誰がやるの!?僕以外にダディとマミィの子供はっ!大井継承者はいないでしょう!?」
叫ぶアルゴノートを見つめた2人は小さく首を横に振る。
「………この国では双子が生まれた際どうするか、アルゴノートは習ったか?」
国王さまの言葉に、アルゴノートは首を傾げた。
「殺すか養子に出すんだ。家をどちらがつぐか揉めないように、他家に出して争いの目を摘み取るんだ」
国王の言葉に、私はぎゅっと拳を握り込んだ。
(いやだ、いやだいやだ、いやだいやだいやだいやだ、いやだいやだいやだいやだ………!!言わないで!!取らないでっ!)
平伏している体制を無理矢理に変えさせられた私は、ノエルによって涙をキスによって吸い取られる。
「ごめん、シェリー」
淡く微笑んだ彼は灰色の瞳に浮かんでいるであろう私の恐怖に気づいていながらもずっと淡く微笑んでいた。
剣だことペンだこのある努力家の指によって、ゆっくりと、着実に、彼の瓶底メガネが取り外され、ふわふわに下ろされていた黒に近い猫っ毛がかき上げられる。
分厚いメガネと檻のような髪の奥には、信じられないほどの美貌が備わっていた。
アルゴノートさまと同じ顔立ちに、王家の瞳たる太陽のような輝きを持つ黄金の瞳に理知の炎を灯したノエルは、私を腰に抱いたままアルゴノートに微笑みを向けた。完璧な笑みは、16年間王太子として王子スマイルを学んでいたアルゴノートよりも、ずっとずっと美しい王子スマイルだった。
「で?今回のことの責任はどうとるおつもりで?」
不遜な態度すらも許されている現状と彼の容姿から、皆が言うまでも気がついてしまっただろう。
ノエルがアルゴノートさまの双子の弟君であることに。
「ノエル、ねぇ、やだよ、ノエル。ノエル………、」
甘えてるのはわかってる。
でも私は、ノエルがいないと何にもできない。
出会った頃から、私はノエルの虜なのだ。
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