第11話

「貴様!僕の婚約者にキスをするとは殿様だ!!平民の分際で僕を苔にしやがって!!」

「………苔………………、」


 ぼそっと呟いた私は、彼に再び姫抱きにされ頬や額に甘々とろとろのキスを受けながら、彼の執事服をぎゅうぅっと握り込んだ。


「俺、殿様らしいぞ?」

「ふふっ、」


 思わず笑ってしまった私は、彼の胸元に自らの額をすり寄せる。


「ノエル、めっ、でしょう?私はあのお方を王さまにしなくちゃいけないの。だから上手に諭さなくちゃ」

「………………」


 私は淑女の微笑みを浮かべると、ビジュがどうこうぶつぶつと騒いでいるヒドイン=チェルシーを横目に、アルゴノートさまに声をかける。


「アルゴノートさま、まず初めに私はあなたとは婚約を結んでおりません。私は生まれつき身体が弱いために、王家には嫁げないと判断されました」


 ピコンと親指を立ててグッドの指を作った私は、穏やかな声音になるように気を使い、それこそ胃がキリキリとするぐらいに気を使って話す。


「そして2つ目に、私はチェルシーさまをいじめておりませんし、いじめる理由がありません。私はあなたに懸想など全くしておりませんから」


 人差し指を立ててLの字を作った私は、最後に中指を立てた。


「最後に、私は何としてでも王妃にはなりたくありません。人に注目されることが嫌いだからです。だから、今すぐにでも帰っていいですか?帰っていいですよね!?」


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