第7話

「アルさまが何を言っても聞かない挙句、勝手に話を進めるので諦めました。逆ハークリアしたので隠しキャラのビジュを見たら、即刻おさらばしますので、ご安心ください。って言っても伝わらないか。あぁー、この悪役令嬢なんか小鞠っちぽくて懐かしー」

「———」


 唖然としてしまう私が何かを口にしようとした瞬間、アルゴノートさまがキララーンと自らご自慢の太陽のような輝きを持つ金髪をかき上げた。


「貴様の悪食!全て僕の耳には入っている!!」

「悪食………?」

「貴様がー、えぇーっとなんだっけ?」


 後ろにいた従者さまがささっとアルゴノートさまの耳元によって、こしょこしょと何かを話している。

 従者さまののお手々には汚ったない文字で綴られた、誤字脱字、インクの飛び散りまみれのカンペらしき作文用紙が握られていることから見ると、どうやらアルゴノートさまは今回の断罪に道筋を立ててからこの場に立っているらしい。

 つまり、お馬鹿でその場その場の適応力がないアルゴノートさまは、誰がなんと言おうとその場の状況にそぐわなくともノンストップでカンペを読み上げるということだ。


(終わった………。泣きたい、叫びたい、地団駄踏みたい、………うぅー、また吐きそう。胃が痛いし、喉が痛いし、頭グラグラする………………、)


 半泣きの私は、ふらふらとし始めた身体を従者のノエルに預ける。

 細身に見えるのにも拘らずずっしりと広い胸板に身を預けた私は、ノエルにされるがままふわりふわりと頭を撫でてもらう。

 ノエルの日々の努力によってツルツルさらさらに保たれている銀髪は、彼のお気に入りらしくこうしてよく撫でられる。

 ちゅっちゅと落とされるキスもされるがまま状態で甘えていると、私の耳は彼によって閉ざされた。


「?」


 目の前のアルゴノートさまが何やら叫んでいるが、それらの罵詈雑言を私の耳に入らないようにしてくれているのだろうか。


「やっぱりノエルは優しいね」


 ぽつりと呟くと、彼が驚いたように私の耳から手を離す。


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