開演!ハロウィンナイト
1.【Halloween in the Night Garden】
美しい花火と共に秋祭りは静かに幕を下ろし、
ガーデンにハロウィン期間がやってきた!
一般生徒は何処かへ帰ってしまい、平常時なら静まり返っている筈の、夜のガーデン。
今宵はグラウンドや校舎など至る所にカボチャ頭のゴーストが出没し、盛大にイタズラをしているのが寮からも見て取れる。
得意の少々大き過ぎる念話で寮に居たドール達に声を掛けたアイラは、2階の自室前の廊下に集まってくれた顔ぶれを3つのチームに分けることにした。
尚、この廊下にも既に、タヌキのような姿で頭はカボチャのゴーストが、3匹でハシゴを作って電気を付けたり消したりしている。 ヤユとみるくが3階から降りてきても、「わあ……」という顔をしてすれ違う2人のドールに対し、愉快そうな笑い声をあげただけで、逃げようとはしなかった。
カチ、カチ、カチ、カチ
楽しそうに遊んでいるゴーストの意識は、あまりドール達には向けられていないようだ。
アイラは小声で元気よく確認する。
アイラ「3階にも同じの居たんだね?!」
みるく「居ました!」
ヤユ「そういえば居たかもしれないねぇ」
アイラ「おっけー!1階はどうかな、」
エマ「タヌキ?みたいなの、居たよ、怖いからあんまりよく見なかった…」
アイラ「ようし!じゃあ今から上の階も下の階も、寮内のタヌキゴーストを一網打尽にします!」
アイラ「まずはAチーム!メロディアさん、リブルくん、みるくちゃん!今からそうっと3階に行って、メロディアさんの魔法でコッペに変装して2階までゴーストを誘導してください!」
メロディア「いいよ、練習の成果を見せる時が来るとはね」
リブル「分かりました」
みるく「はーい!」
アイラ「次はBチーム!Aチームと同じく、コッペに化けて1階から2階にターゲットを追い込んでください!メンバーはエマちゃん、リリーちゃん、リブルくんの蛇ちゃん!」
リブル「!?」
エマ「分かった」
リリー「任せてください!」
カプリ「シュルル」
リブル「僕と相棒離されるの…?」
アイラ「すまないね!リリーちゃんにはサポーターがほしいなと」
リブル「カプリは僕のサポーター、というか、相棒なんですが」
エマ「お目付け役じゃ仕方ないよね…」
リブル「魔法の精度も落ちてしまうんだけど…」
リリー「ごめんねリブル君…!」
リブル「…仕方ないか…」
アイラ「で、2階では私とリラちゃんとラズールくんとヤユさんで、罠を作るよ!」
リラ「頑張ります…!」
ラズール「承知しました」
ヤユ「いいよ。面白そう」
各チームが配置に着くべく移動を開始する。
3階へと向かうAチームが傍をゆっくりそうっと通り過ぎようとすると、タヌキのようなカボチャゴーストたちがくるりと一斉に顔を向け、タヌキらしからぬ声でケタケタと笑った。メロディアは目を逸らしながら、みるくは目を真ん丸にし口をぽかんと開けながら、リブルはしかめっ面をしながらタヌキたちとすれ違い、足音を殺しながら素早く3階へと上がって行った。
===
2.【Make a trap】
アイラ「じゃあリラちゃんは私の部屋に。……ちょっと片付いてなくてごめんね?」
リラ「ちょっ………と………?」
アイラ「ヤユさんはラズールくんの部屋に!両側から、イエロークラスの私たちで、反射魔法で鏡にする物の位置と角度合わせながら、集光装置を作っていきます!」
ラズール「なるほど。」
リラ「お手伝い…したいけど…そんなこと、出来るのかな?」
アイラ「感覚では何故か出来る気しかしない!」
リラ「根拠の無い自信…!」
アイラ「いやいや自信こそ根拠だよ!」
リラ「なるほど…!?」
アイラ「ただまあ、こんなに規模の大きい設置型の罠を作ったことは絶対無いから…調節はラズールくんとヤユさんに指揮してほしい!」
ヤユ「いいよ〜」
ラズール「やってみましょう」
アイラ、リラ、ラズールは天井タイルや廊下のタイル等に反射魔法を掛け、ヤユにも使い捨てライトで光の集まり具合を確認してもらいつつ、集光装置を作っていく。難航したが、ヤユとラズールの指示を受け、アイラとリラで廊下にノートの紙片を折って角度をつけたものなどを設置していくと、段々光が1箇所に集まるようになっていった。
===
3.【Slump】
1階では、エマが自身とリリーに変装魔法を掛けようと頑張っていた。
エマ「う〜〜、どうしてこうなっちゃうんだろう」
リリー「う、うさ耳可愛いよ!」
エマ「せめてコッペの耳になってよ〜…」
窓ガラスに映る、うさ耳のエマとリリー。蛇のカプリは傍で励ますように舌をちろちろと出している。
リリー「ほ、ほら!カプリちゃんも頑張れって言ってます、多分」
エマ「…うん。頑張る…よ!」
エマ「集中…集中…!…“Déguisement Magie à volonté(デギズマン・マジ・アヴォロンテ)”!」
エマの呪文と共に、ドカーンと爆音が響く。
1階のオバケたちはエマとリリーとカプリに注目して動きが止まった。
エマとリリーは顔を見合わせる。互いの姿を見るとどうやら今度は成功したようだ。
傍らでシュルル、と得意げな顔のカプリである。
2匹の犬に蛇、と見て、慌てだすタヌキのカボチャゴースト達。リリーは早速1階へ追い立てるべく走り出す。
リリー「わんわんわん!」
エマ「待って!なんだか今なら上手くできそうな気がする!…“Voix étrange Magie à volonté(ヴォワ・エトラーンジュ・マジ・アヴォロンテ)”!」
リリー「わんワンワン……ウォン!?ワンワンワンワンワン!!(あれ!?すごい!コッペさんの声になってます!!)」
エマ「やったあ!しろちゃんはやっぱりパワースポットなのかも。もう1回!」
3匹は1体の取りこぼしもなく、1階に居たイタズラゴーストを2階に誘導することが出来た。
===
4.【Smart】
メロディア「今の爆発音何?」
みるく「まさか………爆発!?」
リブル「当たらずとも遠からず…ですね、エマ先輩の魔力の暴発かと」
みるく「暴発…魔力って、そんなふうになることあるんですね。こわい…」
リブル「…授業で聞かなかった?」
みるく「眠くなっちゃって。えへへ…」
メロディア「さあさ!今から皆をコッペにするから、お互いに触れちゃダメだよ。魔法が解けちゃうからね。」
みるく「グリーンクラスの変装魔法ですね?!」
リブル「それは知ってるんだ?」
みるく「魔法!!って感じでとっても素敵ですよね」
リブル「魔法に興味関心はあるのに危険性についての授業は聞いてないの、危なっかしいな…」
メロディア「えいっ!」
みるく「リブル先輩がかわいいわんちゃんに!」
かわいいわんちゃん、との言葉に不服そうな顔をしているリブルのおかげで、メロディアとみるくの眼前には、コッペ本人がおそらくした事の無いだろう表情をしたコッペがいる。
メロディア「さくっと行くよ。えい!」
みるく「わあい!どうですか、私もかわいいわんちゃんになってますか!?」
メロディア「なってるよ。ほい、っと」
みるく「ワン!ワンワン、ワンワンワン!?(あ!そういえば、呪文とか要らないんですね!?)」
リブル「何を言っているのか分からな」
メロディア「ほいっ」
リブル「ワンワンワ…………」
メロディア「ふふ、二人共コッペになりきって元気に吠えてね?」
みるく「ワン!ワンワン!(はーい!分かりましたー!)」
リブル「ウォン(仕方ないですね)」
メロディア「じゃああたしも、っと」
3人のドールの様子を伺っていたタヌキのようなカボチャゴースト達は、3匹のコッペにより無事3階から2階へと誘導されることとなる。
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5.【Curtain】
バタバタとゴースト達が集められる音が上の階からも下の階からも聞こえ、ゴースト達とコッペ達が駆けてくる。
リラ「き、来ましたね…!」
ラズール「今です」
ヤユ「始めよっかぁ」
アイラ「いくよ!」
ゴーストが集光装置へ近付いた時、反射魔法の掛かった天井に向け、4人は使い捨てライトを反射鏡にした天井へ向ける。突然の眩しい光に、ゴースト達はよろめき足を止めた。
ラズール「ヤユさん」
ヤユ「言われなくても分かってるよぉ……“水よ”」
ヤユが廊下を水で濡らす。6匹のコッペの鳴き声に慌てふためくゴースト達は、水に足を滑らしすっ転ぶやらチカチカするやらで次々ひっくり返った。取りこぼしや立ち上がって逃げようとするゴーストは、各自水泡魔法や浮遊魔法で足を掬い転ばせる。
メロディア「変声解いたよ!」
リブル「ふう…ありがとうございます!“水泡よ”」
エマ「リリーさんも変声魔法解くね。」
リリー「ワンワンワんわぁ!?」
リブル「えっうわっ、ちょっと!相棒!」
夢中で動き回っているうち足を滑らせたリリー。リブルは巻き込まれそうだった相棒を浮遊魔法でさらりと救い出す。そして直ぐに、転んだリリーに手を差し伸べた。
リリー「いたた……」
リブル「大丈夫ですか….まったくもう…」
リリー「ごめんね〜…カプリちゃんもびっくりさせてごめんなさい….あ、そ、そういえばカプリちゃんさっき凄かったんだよ!リブル君、あのね、」
リブル「?相棒がどうしたと、いや、その話は今は後に」
みるく「どっひゃー!?どいてどいてー!!」
リリーの転倒がかわいらしく見えるほど豪快に廊下を滑りつつゴーストを蹴散らしながら、みるくが勢いよく通過した。
ヤユ「賑やかだねぇ…」
ヤユは蹴散らされ目を回しているゴーストをマイペースに縛り上げていく。
ラズール「あざやかな手並みですね」
ヤユ「そうかなあ?」
リラ「し、縛る…生き物を縛る…きっとやり方の書いてある本が図書館に」
アイラ「だいじょうぶだいじょうぶ、こーいうのはねー、適当適当!……あっ、逃げた!!」
リラ「きゃっ!?」
ラズール「おっと、……捕まえた。」
アイラの手を逃れ、リラを踏み付けて逃げようとしたカボチャゴーストを直前、ラズールが浮遊魔法でぽーんと自身の方へ放れば放物線を描いて飛んでくる。衝突する前にゴーストへ縮小魔法をかけて小さくし、キャッチしたラズールは、ジタバタもがくカボチャゴーストの首根っこをつまんでいる。それを見てエマが言った。
エマ「それ、いいね。縮小魔法掛けて、浮遊魔法で浮かせて運べば、討伐報告しやすいかも。」
アイラ「その手があった!縛ってるロープごと小さくして運べるかな!?」
エマ「どうだろ、…僕は十分な魔力があるけれど、魔法のコントロールが…」
メロディア「あたしも手伝うし、皆でやれば大丈夫でしょ」
アイラ「結構魔法使ったでしょ?疲れちゃってる人は無理しないでね!」
リブル「まだまだやれますよ。相棒も戻ってきたことですし。」
みるく「私にもお手伝いさせてください!」
アイラ「大丈夫?倒れない?」
みるく「大丈夫ですよ、魔力少なくったってできることはします!あったりまえです!」
アイラ「よーし、じゃあ皆で協力して!」
ヤユ「そのあとは、別の所に遊びに行ってもいい?」
アイラ「いいよ!」
ヤユ「わーい」
ラズール「それでは、このメンバーでの最後の共闘、になりますね」
リリー「少し寂しい、かも…」
リラ「また日常の中で、仲良くしたいですね」
アイラ「ふふふ、ちょっと楽しかったよね。皆力を貸してくれてありがとう!最後までよろしく!いくよ!」
こうして、ナイトガーデンの廊下を賑わせたカボチャゴーストたちは、ロープで厳重にぐるぐる巻きにされた上小さくされて、バグちゃんに引き渡されたのだった。
===
6.【END … & RESTART】
エマ「僕とメロディアさんは美化委員と園芸委員として見過ごせないから…園芸美化用具室のゴーストを退治しに行ってくるね」
メロディア「もし良かったら手伝ってくれないかな」
ヤユ「いいよぉ、それじゃあそっちに遊びに行こうかな」
リブル「アイラ先輩、リラ先輩、先輩方と隊を組めたらと思うのですが」
アイラ「隊を組みたい…?」
リラ「………ふふっ」
リブル「前言撤回してもいいですか???」
アイラ「ごめんごめん行くよ!!」
リラ「お手伝いさせていただきますね」
アイラ「そしたら、リリーちゃんとラズールくんとみるくちゃんで、リリーちゃんのよく使う家庭科室を守りに行ってみるのはどうだろう?」
リリー「そうですね、そうします〜」
ラズール「自分はお二人に着いていきますよ」
みるく「家庭科室!よければ行きたいです〜」
アイラ「それじゃあ皆、気を付けてね!」
ハロウィンはまだ、終わらない
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