第12話 階段で
さつきは学級会の準備をするためのプリントを抱えて、教室に向かって階段を降りていた。階段の最後でバランスを崩して、踏み外すような感じになり、ちょうどそこに偶然通りかかったまおがすばやく反応し、さつきを抱きとめたが、プリントは廊下にばら撒かれてしまった。
「さつき、大丈夫?怪我はない?」
さつきはまおに優しく抱きしめられる形になってドキドキしていたが、気を取り戻し、
「大丈夫だよ、まおが助けてくれたから。ありがとう」
といって立とうとしたが、さつきの身体から力が抜けていくような感覚が広がり、まおはまた抱き抱えるようにさつきを支えて、心配そうに問いかける。
「本当に大丈夫?どこか痛くないの?」
「大丈夫だよ、痛くはないの。ちょっと驚いちゃって、力が抜けちゃったみたい」
さつきは転んだことに驚いたのか、抱きしめられたことに驚いたのか、自分でもよくわかっていない。
まおは心配そうにしながら指示する。
「階段に座ってて」
まおはさつきの体を支えながらゆっくりと階段に座らせると、散らばったプリントを素早く片付け始める。さつきは申し訳なく思って立ち上がろうとするも、どうしても身体に力が入らない。
「こらさつき、座っててって言ったでしょ?」
まおは子供を叱るように可愛く睨みかえけてさつきを座らせる。まおは彼女のためにプリントを丁寧に拾い集めている。さつきはその姿を見ているうちに、心が温かな気持ちで包まれていくのを感じていた。
プリントをまとめ終えたまおは、心配そうにしながらも笑顔でさつきに話しかける。
「もーこんなにたくさんプリントがあるなら、誰か呼べばいいのに」
「いや、一人で持てるってこのくらい」
「持てないからこんなことになってるんでしょ。次からはまおを呼ばないとダメだからね」
まおはイタズラっぽく笑いながらいう。そして少し心配そうにさつきに語りかける。
「さつき、もう少し座っていたら?無理しなくていいから」
「ううん、もう大丈夫だよ」
さつきは手すりに捕まりながら立ち上がった。
「大丈夫なの?」
「うん、もう平気だって。ありがとうプリント拾ってくれて。本当に助かったよ」
「本当に?教室までおんぶしてあげようか?」
まおは背中を見せてくる。多分さつきがお願いしたらまおは本当にさつきをおんぶして教室まで連れて行ってくれるだろう。さつきは少しだけお願いしたかったけれど、そこまで甘えるのはやめておいた。
「もう大丈夫だから、プリントありがとう。私が持っていくよ」
「ダメです。怪我人はまおのいうことを聞かないと」
まおはプリントを抱えたまま、肘をあげてきた。
「はい、ここに手を回して」
「わかりました。お姫様」
さつきはまおの肘のところから手を回して腕を組む。
「わかったならいいんだ。じゃあ教室まで後少し頑張って」
まおはさつきを支えながら教室まで歩いた。
彼女の優しさに触れたさつきは、少し恥ずかしそうに笑ってまおの横に並んで歩いていった。
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