第11話 お風呂からの通話
日曜日の夜、なぎは部屋でお気に入りの本を読んでいた。静かな時間の中、スマホの音が現実へと引き戻す。ひなからだった。
「もしもし?ひな、どうしたの?」
「ちょっと暇だったからかけちゃった?なぎの声が聞きたくなったの。今何してるの?」
ひなの明るい声が聞こえてきた。
「それはありがたいけど。暇じゃなかったら、私の声は必要ないってことかな?」
「ごめん、ごめん。でもね、なぎの声で心が和むの。明日から学校があるし、リフレッシュしたいのよ。もう学校に行くのが辛くて」
ひなは笑いながら答えた。
「私の声で和むなんてあるのかなあ?まあいいけど。明日から学校だけど、学校だって楽しいじゃん。まあひなは勉強は苦手かもしれないけど、みんなにに会えるんだよ?」
「いやそうだけどさ。確かに二日もなぎに会っていないから、なぎ成分が足りなくなってるよね。禁断症状が出ちゃってるかもしれない。だから声が聞きたくなったのかも」
「絶対そんなことないよね?」
なぎは厳しくツッコミを入れる。
「もうごめんって。でもなぎの声が聞きたくなったのは本当だから」
「まあいいけど。それにしてもなんかチャプチャプ音がしてるんだけど、もしかして……」
「うん、お風呂からだよ。いい感じのエコーがかかってるから、ひなの声がいつもの三倍ましのいい声になってるでしょ」
ひなは全く悪びれもせずに笑う。
「いやいや、ひな、絶対スマホ落としちゃうでしょ?大丈夫なの?」
「今落ちない場所において話してるから大丈夫だよ。そもそもひなはそんなにおっちょこちょいじゃないから」
「まあ確かにおっちょこちょいじゃないかもね。そそっかしいところはあるけど」
「おっちょこちょいとそそっかしいって何が違うの?」
ひなは真剣に聞いてきた。
「いやめんどくさいから後で調べてみて」
「はーい」
「調べないんでしょ」
ふふふとひなは笑って誤魔化した。
「それにしても最近寒いからお風呂はあったまっていいよ。なぎも一緒に入ったらいいのに」
「ひなと一緒にお風呂入ったら大変そうだからいいよ」
「もー、なんでそんなこと言うのよ」
「でもそうだね。いつか温泉とか行ってみたいね」
「でしょでしょ!行きたいね!明日行こうか?」
「いやいや明日は行かないよ」
「じゃあいつ行くのよ」
「うーん、ひなと二人は無理かなあ」
「何でよ!私結構ちゃんとしてるから大丈夫だよ」
「じゃあ明日朝一人で起きれるの?」
「それは無理かも」
ひなは納得してしまった。
「じゃあそろそろお風呂から出るよ。しっかり寝て明日遅れないようにしないとね」
「そうだね、じゃあおやすみ」
「うん、ありがとう、また明日、あああああーーーー」
とても嫌な叫び声を残してひなとの通話が切れた。
ひなからはちゃんとチャットが来て、生存確認が取れたのでなぎはほっとした。
でも何だかなぎはすごく興奮してしまって寝れなくなってしまった。
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