第9話 お昼ご飯と桜並木
クラス委員長になったさつきは、クラスのことを考えながらため息をついていた。なおはそんなさつきのことをお昼ご飯に誘った。
「さつき、一緒にお弁当食べない?」
さつきは陰っていた顔を隠すように微笑む。
「いいよ、そっちにいくね」
「ううん、ちょっと行こう」
なおはさつきの手を取って教室を出て歩き始めた。
「どこにいくの?」
「ふふふ」
なおは答えず、別棟まで歩いて視聴覚室に入る。
「ここだよ」
「視聴覚室?」
「そうここで食べよう」
窓わに腰掛けると、遠くには川沿いの桜並木がよく見えている。二人は用意したお弁当を取り出してお昼ごはんにする。
「ここからこんなに桜が見えるんだね。とっても綺麗。春って感じがする」
なおは微笑みながら頷く。
「そうでしょうそうでしょう。桜って、新しい始まりや希望を象徴しているみたいで綺麗だよね」
窓から爽やかな風が吹き込む。
「いただき!」
なおはさつきのお弁当箱から、ウインナーを取って口に入れる。
「ちょっとなお!まあいいけど。美味しい?」
「んー美味しい。やっぱりさつきのお弁当は最高だね」
なおは満面の笑みで目がなくなるくらいになっている。さつきはなおの笑顔が大好きだった。
「どこにでも売ってるウインナーだよ」
「そんなことないよ、さつきのお弁当箱に入ってるウインナーはどこにも売ってないからね」
「そんなに美味しそうに食べてくれるならウインナーも本望だろうね」
さつきは笑顔で答える。
「じゃーこれはお返し」
なおは自分のお弁当箱から卵焼きを差し出す。
「ああー私の愛しい卵焼きよ、さようならー」
「私は遠慮しないからね」
さつきは半分卵焼きを食べる。ほんのり甘い卵焼きだった。さつきは心に染み入るような柔らかい甘さのこの卵焼きが好きだった。
「なおの卵焼きは最高だねえ。この甘さってどうやって作ってるの?私この前作ってみたけど、すっごい甘くなっちゃったよ」
「それは企業秘密ですから。知りたかったらうちに遊びにおいで」
「いくいく!それは楽しみだなあ」
二人は笑いながらお昼ご飯を楽しんだ。
最近疲れ気味だったさつきにとって、なおの気配りはまさに心のオアシスになっていた。
「なお、お昼ご飯誘ってくれてすごくありがたかった。最近、なんだか疲れちゃってて」
なおはオーバーに首をかしげながら言う。
「そうだったんだ。そんなこと、全然気にしてなかったよ」
「ありがとう、なお。本当に嬉しい」
さつきはなおが気にしてくれているのに、気がついていないふりをしてくれていることに本当に感謝していた。
「来年も、一緒に桜が見れるといいな」
なおの提案に、さつきはうれしそうに頷く。
「そうだね。絶対に叶えよう」
「っていうかまた明日来たらいいか」
二人は桜並木を見ながら微笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます