第5話 鬼も笑う
英語の授業が終わり、さつきはひなのところに駆けつけた。
「ねえひな、さっきの英語の授業、すごかったね。やっぱ天才だわひなは。なんであんなこと返せるのか私はさっぱりわからないよ」
「だってさつき、先生が急に質問してきたかららさ、ひな焦っちゃって、もう意味もわからず何か答えないとって思ったらあんな答えになっちゃったんだよ。でもさ、英語なんて聞き慣れてないんだから、何言ってるかわかんなくない?十分答えられた方だって思うよ。ひなとしてはあれ以上の答えはないと思ってるよ」
さつきはひなの言葉を聞きながらお腹を抑えて笑いが止まらなかった。
「ちょっとさつき、笑ってないでなんとか言ってよ。っていうか笑いすぎじゃないの?まあさつきがそんなに笑ってくれるならひなも本物だよ」
さつきは笑いながら、
「ひなは本物だけど、多分本望だね」
「もうそういうのはいいから、なんとなく伝わったらいいんだよ」
ひなはにっこり笑いながらさっきの英語の授業の時のことについて語り始めた。
「先生がさ『What is your favorite season?』って聞いてきたでしょ?だからひなは好きなフレーバーって聞かれたと思って、浮かんだのが『バーガンディチェリー』なだったんだよ。まあまあ当たらずとも近からずって感じだったと思うんだけどなあ」
「近くなかったら完全にハズレだよね。遠からずだよ、フェイバリットとフレーバーねー、まあそう聞こえるかもしれないと言えばそうかもしれないけど」
「やっぱそうでしょ、だから基本的なところは惜しかったんだよ」
「いやバーガンディチェリーはアイスだから、季節じゃないよ」
「まあそうなんだけど、春が好きみたいな感じでさ、季節をおしゃれに答えたみたいに思ってくれてもいいと思うんだよ。心を広く持てばさ、世界も平和になるってことじゃん?」
「まあ確かにひなといると飽きないし、笑いっぱだから、争いも起きないかもね」
「さつきもわかってきたよ、えらいえらい」
「先生もノリを合わせてくれて、美味しそうだねって言ってくれたしね」
「そうだよ、先生はちゃんとひなの心を大事にしてくれてるんだよ、さつきもひなのことを大事にしてくれていいんだよ」
「こんなにひなのことを大事にしてる人他にいるとは思えないんだけど」
さつきはようやく落ち着いてきたが、まだお腹を抑えている。
「それにしてもバーガンディチェリーはちゃんと覚えられるんだね」
「そりゃそうだよ、一番好きなアイスだからね、今度一緒に食べに行こうね」
「いくのはいいけど、期間限定だからまた来年だよ」
「それくらいわかってるよ、だから来年行こうって言ってるの。来年の楽しみが増えた方が生きるのが楽しみになるでしょ?」
「鬼が笑うって言うけど、まあそう言うことにしておこうか」
「なんで鬼が笑うの?鬼もアイス食べたいの?」
「ひながいたら鬼も大爆笑できっと仲良くなれるかもね。あっ次の授業始まるわ」
さつきはまたお腹を抱えながら自分の席に戻った。
ひなはなんで鬼が笑うんだろうと不思議に思っていたが、結局すぐに忘れてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます