第4話 落書き

休み時間さくらはノートをてれさに見せてきた。


「ねーねー、てれさ。さっき授業中に似顔絵描いてみたから見てみて!」

さくらははしゃぎながら言った。


「ちゃんと授業は受けないとだめだよ」

と言いながら、てれさは興味津々の表情でさくらのノートを受け取った。


さくらは小さな瞳をキラキラさせながら、絵を見ているてれさを見つめている。ノートのページに、小学生が描いたような女の子だと思われるシンプルな似顔絵が描かれていた。笑顔はとても可愛い。てれさは微笑みながら視線を注いだ。


「すっごい笑顔が可愛いいけど、これ誰の似顔絵なの?」

「誰だかわかんないの?そっくりなんだけどな。当ててみてよ」

「あんまり言いたくないんだけど、もしかして、私なの?」

「ほらすぐにわかったでしょ。結構特徴とらえてると思うんだよね。会心の出来でしょ」

さくらはどや顔している。


てれさは思わず笑い出して、さくらの頭を撫でた。

「ありがとう、さくら。笑顔がとっても可愛いけど、私こんなリボンつけてないし、ツインテールもしたことなんてないよ?これ誰だか当てるのすっごい難しいって」

「こんなに目が大きくて可愛い笑顔してるのはてれさしかいないじゃん」

さくらは自然とすごいことを言っているが、本人は全く気が付いていない。さくらの素直な言葉はてれさにはとても照れくさい。


「でもさ、ほんとはもうちょっと上手く描きたいよね。てれさみたいに絵が上手くなるにはどうしたらいいんだろう。てれさ、上手な絵の書き方教えてよ」

さくらが真剣な表情でてれさに頼んだ。


てれさは微笑みながら、隣に座っているさくらの手を優しく取った。

「まあ私はさくらの絵は好きだよ。さくらしか書けない絵だから。このままのさくらでいていいんじゃない?」

「確かに私の絵は味があるけど、もうちょっと上手くなったら、世界に轟く絵が描けるかもしれないじゃん」

「そうなるかどうかわからないけど、さくら、絵っていうのは練習と観察が大事なんだよ。まず、何かを描く前にその対象をよく見てみて。細部まで気づくことが大切だよ。それから、自分の感じたことや思いを絵に込めてみて。絵っていうのは自分の世界を表現するものだから、自分自身を大切にすることも大事なんだよ。」

「なるほどねー。ってことはさ、このてれさの似顔絵、てれさをよくみて描いてると思わない?大きな目に可愛らしい笑顔、それからてれさの笑顔が大好きな私の気持ち

と、絶対に似合うツインテールとリボンをつけて欲しいなっていう思いも入ってるんだよ」


てれさはさくらのストレートな愛情に、あれ?さくらの絵って確かにすごいのかもと錯覚してしまった。


「今度、ツインテールにリボンの髪型にしてみようね。そうしたらこの絵も現実化したってことになるし」

「いやいやそれは無理」


二人の押し問答は先生が入ってくるまで続いた。

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