第3話 ツンとデレとデレ
みくは教室に入るとキョロキョロとみんなを見渡した。そして少しホッとしたように胸を撫で下ろすと、窓際の一番後ろの席に腰をかける。みくは心躍るような気持ちで、入り口を見つめている。
「あれ、今日はちょっと遅いな」
スマホで時間を確認したみくが顔を入り口に向けると、あやがやってきた。
「あや、おはよう、はいおいで!」
みくは大きな声で入口のあやに話しかけると、満面の笑顔を向けながら、大きく手を広げて立ち上がった。あやは表情を変えることなく、ゆっくりと手を広げているみくに近づいてくる。
「あや!ほらここ空いてるよ!いつもみたいに飛び込んできなよ」
「いやいやみく、飛び込んだことなんてないでしょ」
「何いってんのよ、あや、照れなくていいから、素直になりなよ」
「照れてないし。私はいつでも素直です。素直に席に座りたいの。いつもいってるけど、ここは私の席だよ」
「はいはいわかってるわかってる。おいでってば」
みくはあやの前に立ちはだかり、もう一度手を広げると、あやは軽くためらいつつも、その手に触れる。みくは優しく微笑みながら抱きしめ、ぎゅーっとあやを包み込んだ。
「みく、毎日毎日、朝からこんなに抱きしめなくてもいいでしょ」
「だって、あやが可愛すぎて我慢できないんだもん。昨日別れてからもう9時間も経ってるんだよ。愛情が溢れて止まらないよ」
「いやいや、帰ってからもラインでずっと話してたじゃない。」
「ラインはラインだよ。生身のあや不足なんです」
いつもと同じみくの言葉を聞きながらも、変わらないみくの愛情が少しだけ嬉しい気持ちはあるけれど、それを口にしたらどんなことになるのか恐ろしくて、あやははいはいと言いながら、みくに抱きしめられるままでいた。実際、みくの暖かい抱擁に心が和んでいる自分もいた。みくの愛情表現はちょっと、いやかなり重いけれど、その愛情に触れるたび、あやの心も少しずつ溶けていくようだった。
「もういい?」
「んーまだ足りないけど、とりあえずこのくらいにしておくかな」
みくはあやから離れて、微笑みながらも少しだけ不満そうにしている。
「やっぱりもう一回!」
急に動いたみくは、そのままの勢いであやを抱きしめ、あやの唇を奪おうとする。
「危ない!」
あやはしっかり手を伸ばしてみくの肩を掴んでそれを阻止する。
「もーなんでこういう時だけ力強いのよ」
「慣れてますから」
「むー」
抗議をするようにほっぺたを膨らませているみくの顔を見てあやは笑った。みくもあやの笑顔を見て幸せそうに笑う。
「そんな笑顔を見ちゃたら、もっと好きになっちゃうね」
私もそう思ってる。という言葉をあやは心の中で呟いた。
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