ケルテン伯爵邸の防備は鉄壁

「スターシャ。今日も危ないところをお散歩してきたらしいね。気を付けるのだよ。男は狼だからね。いつ襲い掛かってくるかしれない」


「ええお父さま。淑女は歩いているだけで心を射止めようとする殿方に八十八ミリ砲で狙い撃たれることは承知しております。気を抜かずにお散歩いたしますわ」





「カール。今日の戦況は?」


「はい、お嬢様。西部戦線にて、ただいまフルダ要塞が敵の集成重砲集団により攻撃を受けております。一時間で三百八十ミリ砲弾が六百三十五発発射され有効着弾数五百九十発。そのうち三十八発が不発弾。トーチカへの直撃弾は二十二発。魔導兵による迎撃成功率は十三パーセント。芳しくありません。今後想定されるダメージはトーチカが三か所撃破される見込み。生産ロット数での分析はアームストローグ工廠の1939102が最優秀で……」


「お茶が冷めないくらいにまとめてくださいね」




「今回、カールさまに代わってお嬢様のおそばに侍らせていただくことになった戦闘メイドのマリアと申します。旦那様のお言いつけ通り万全を期し、歩兵一個師団程度の攻撃ならば守り切る自信がございます」


「よろしく頼みますわ。ところでそのメガネ。度が強すぎませんこと? 大分分厚いようですが」


「ご安心を。これは伊達メガネでございます。ガラスは防弾ガラス。二十ミリ弾ならば跳ね返す防御力がございます」




 スターシャの屋敷の警備は万全であった……。






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