第43話 町を創ろう。 予定とそれから。
床に転がっている奴らを、軽く治療して、そのまま牢の中へ放り込む。
被害にあっていた人は、化膿止めにペニシリンと、痛み止めにアスピリンを与える。
そして、兵達が制圧をして、中を確認した領主の館を内見する。
「意外と中は普通だな」
「貴族ですからな。政治的な仕事もあるし、人も呼ぶ必要もありますから」
「とりあえず、こっちを睨んでいる。どう見てもガラの悪い奴らは、さっきの牢だな。頼む」
「はっ」
その日は、結局野宿と同じ携帯食となり、腐ったベッドも使う気になれず。
屋根はあるが、床で寝る。
伯爵に言わせると……
「侯爵達が来るまでは、このような布団が一般的でした。贅沢を覚えて、体がもうだめですね」
そう言って笑う。
翌日。その携帯食を住人達へ大盤振る舞い。そして、枷を解除。
その作業だけで、日が暮れる。
そして、腹ごなしに、捕まえた兵達に話を聞いてくる。
そして、聞き取った話から、この領には、同様の村がいくつか点在しており、そこの解放が必要だと分かる。
研究所へ食料の補給を依頼して、その間に解放を手分けして行って貰う。
「意外と、無茶苦茶だな」
「ここを治めていた辺境伯が、かなりの外道のようですな」
「ああ。だが、環境は良い。捕らえられて働いていた者達も、ここで暮らしていくと言ってくれたしな」
伯爵と簡単な地図を作り、最短で村と村を繋ぐ道を計画する。
街道も、隆起や浸食その辺りのものを調べて、なるべく真っ直ぐに引き直す。
むろん断層とかも、気にして調べる。
意味なく歪んだ道や妙な段差。その辺りは、洪水や断層の可能性がある。
むろん何かがあって、意図的にずらしたものもあるだろうが、その辺りは聞き取りだ。
この大陸。南の山脈が、断層による隆起とその手前の火山。
その辺りを、ある程度気にはする。
歴史的には、そんな被害の記述もあった。
そして、荷物運搬用に最優先でモノレールを設置。それに沿わせて線路を引く。
それはここに来る前、松下や松井。そして雄一にも話はしている。
いま奴らは、レールを造り準備をしているはずだ。
列車用線路の接合部分は、将来を見据えて、通電用にU字型のスライド式プレートを組み合わせている。線路のずれ防止にも役に立つ。
先ずは、そこからだ。
――そして、二年が経ち。
領内も発展をしてきた。
水場での綿花栽培。
これは、かなり限定している。
アラル海の二の舞を演じたくない。
あそこは、湖として世界第四位の大きさだったが、当時のソビエト連邦が「自然改造計画」を実行し、綿花栽培のために大規模な灌漑を始めた。
そして、運河やダム。川の流れを変え、実質四〇年ほどで消えることになった。
なんとか、元に戻そうという取り組みはあり、わずかずつ進もうとしている。
綿花を利用して、布団や布を高値で輸出。
そして、桑を植林して、蚕を飼う。
ところがこいつら、日本でいた蚕と違い。
無茶苦茶元気で逃げ出すため、水槽ぽい箱を作り、壁の頂点に反しを付けることで
歴史に詳しい松井によると、選択的におとなしい奴を育てれば良いと教えて貰った。
「数千年も経てば、良い蚕が残るさ」という話だ。
そうそう。
オリエンテム王国の第三王女フェリシアだが、王の説得を受けて、第三王子リキャルドと婚約をしたそうだ。
二年のうちに創薬なども進んだが、専門家がいる訳でもなく、流行病で幾人か死んでしまった。
先生を入れて三七人だったが、もう二〇人を割り込んでしまった。
だが、原始的だが車は出来たし、そこそこ発展をした。
あとは、手探りでやっている情報の積み重ねが、これからの基盤となっていくだろう。
そして、気にしていなかったが、王国の連中、寄生虫にかなり罹患していた。
寒天を作ろうとなり、赤藻の一種、天草を獲りにいって、海人草を見つけた。
海人草は引き潮時の陸との境界、低潮線よりも深場の岩に生息をする、高さ二五センチ程度の枝分かれをした緑色の海藻?
「これは、確かチョコレートの材料」
小泉洋がそんなことを言って、場が騒然とした。
現物をみんなが見て、当然馬鹿にされた。
「馬鹿だな。チョコレートはカカオだろ。でっかいピーナッツのようなものだったはずだ」
「違う違う。虫下し。そう言えば、赤藻にもそんな効果があったはずだ。知り合いの先生が医動物が専門とかで、一緒に遊びに行った時に教えてくれた。そう言えば、日本でも昔は、マラリアが居て、駆除をしたって聞いたぞ」
「日本にもマラリアが居たのか?」
「そうだ。昔は水路の整備とか、沼地とか消毒をしたらしい」
妙に興奮していたが、思いついたように言い始める。
「これで、薬を作って飲まそう」
「どうやって?」
「こんなもの、生薬だから煮詰めりゃ良いだろう」
かなりいい加減だが、カイニン酸を単離するよりも、結果的に実は効果が高かったりする。
味見をすると、潮臭いし生臭い。
寒天で包み、飲ませることにした。
この時に、蜂蜜が欲しくて養蜂も始める。
これで、猟師さんが泣いたらしいが知らん。
蜂の巣があるところは猟師の秘密で、家族にも教えなかったそうだが、俺達のおかげで価値が下がったらしい。
知らんがな。
そして、虫下しは意外と効果があった。
朝、お尻がかゆい人は注意と、触れを出して貰い。飲ませた。
ついでに、石けんの普及と手洗いの重要さも教える。
ただ、裕樹達は知らなかったが、高濃度のカイニン酸は神経系に障害を起こす。
薬は毒にもなる。飲み過ぎには注意。
そんな平和な間に、メリディオナル王国では異変が起こっていた。
当然その中心は、魔性の女。佐々木 慶子。
慶子を手中に収めたアルトゥロ=パチェコ男爵は、戻ってきた一年後には、隣の領を一部手中に収めて、王家の手伝いを行いながら、その機会を待つ。
だがすぐに、新鉱脈を発見してそれを王家に一部報告。
それは王家も知っていたが黙認。
その裏には、慶子への恐怖があり、王はある日。恐れるあまり道を違える。
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