第11話 エンジン開発による、選択肢の拡大。

 だが、そんなことは気にせず、先生は暴走中。


「ほら、カーリンこの星を見てごらん。渦を巻いているだろう、これは遠くの銀河と呼ばれる星々の固まりなんだよ。カーリンのお星様も、同じように渦を巻くように。ほら」

「あん」


「こら、異世界に来たって言っても、はっちゃけすぎだぜ先生。家でやれ。カーリンんも、何でもかんでも許すな」

「神野ぉ。せっかく良いところなのに」

「これは、神野様」

 カーリンは、地面に平伏しようとする。


「カーリンやめろ。気にしなくていい」

 普段王や宰相と一緒にいるところを見られているので、現地の人たちは俺が偉い貴族だと思っているようだ。


 俺は知らなかった。

 とっくに侯爵位を送られて、それが公示されていたことなど。


 王様達からの、俺が自由に動けるための配慮だったようだ。


「それで何だ?」

 キリッとした表情をしながら、立ち上がったカーリンをまた抱える。

 さらっと、胸に持っていく先生の左手。


「ああ。そうだ。ツーサイクルの構造って覚えているか先生」

「馬鹿だろ、この前ざっと説明しただろ」

 確かに習った。


 ロータリーのハウジング形状を作るときに、妙な数式と一緒にざっと習った。

 フォーサイクルのバルブとカムを無くして、キャブの後ろにリードバルブという薄い板をつけるとか何とか、この混合気を、ドライブシャフト側へ回すことでクランクリードバルブに出来るとか何とか、潤滑とチャンバーとして、空間を利用できるから、スロットルを開けたときの付きが良くなるとか何とか?

 そう、口頭での構造説明。聞いたって何とか? ばかりになってしまう。


フォーサイクルの時も、プラグをヒーターに変え、シリンダーの内圧。つまり、圧縮比を上げて、燃料をガソリンから軽油に変えればディーゼルだってざっくりだし。


「いやあ、発電用とかにロータリーを考えていたけれど、うまく行かなくて、ツーサイクルにしようかと思って」

「そうだな。燃料に対する幅はロータリーの価値だが設計は難しいか。丁度アルコールも出来たし、普通のフォーサイクルでも良いけどな」

「アルコールで、エンジンて動くのか?」

「アメリカのインディカーなどは、昔からアルコール燃料だぞ。メタノールだが」


 言っていることは博識で、立派なものだが、手はずっとカーリンをいじっている。

 ガクガクし始めたし、暗いが、月明かりでうっすら見える表情が、すごく色っぽい。カーリンて美少女なんだよ。


「仕方ない。明日顔を出すようにするよ。ほら、カーリン明日は遠出だ行くよ」

「はい。っいきます」

 いくときは、必ず言わせるようにしているのか?

 カーリンはすでに、先生の腕にしがみつき、ガクガクとしている。


 生徒に見せるなよ。あーもう、先生じゃないのか。

 じゃあ、単なるエロ親父だな。


「じゃあ、よろしく」



 その足で、王都まで戻り、奥の高炉まで足を伸ばす。

 鋳型でいくつかのシリンダーやピストンは作っている。

 細かな精度は、まだ出せないので、現物合わせで合うものを使う。

 

 その横にある砂型は、モーターのコア。

 これに、導線を巻き付ける。

 本当は、ブロックではなく、薄い板で作ったコアを貼り合わせて作った方が良いらしい。鉄損? 磁界が変化すると、内部で電流が発生して、熱になりロスが出るとか何とか?


 銅線も電気を流すと、同じく磁界が発生をして、それにより逆起電力が発生して、表皮効果とかいって、太い銅線の外側しか電気が流れない現象が起こるとか何とか? だからより線がとか拘っている。


 発電や工作で使えるモーターは、家が電気屋で、ガキの頃から某四駆のおもちゃや、ラジコンの電動用モーターの巻き線を変えて遊んでいた松下 友紀(まつした とものり)に任せてある。


 ただ永久磁石を使い、その中でコイルを巻いたコアを回転をさせる直流モーターと、電動機で使う誘導モーターは構造が違うようだ。発電された交流はルート三分の一で位相がずれている。位相というのはサイン波で描かれる電圧の変化。

 それを利用して、モーターが回る。三相式と言うらしい。

 家庭用単相の場合は、コンデンサーを入れて、位相をずらすとか何とか?


 一〇〇ボルト交流は、一〇〇ボルトと言ってはいるが、実際は、プラスとマイナス一四一ボルトの間で絶えず変化をしている。

 その周波数は、関西で六〇ヘルツ、関東は五〇ヘルツらしい。


 らしいが山積みになっていく。まあ、細かなことは良い。


 モーターが出来ると、電動工具が出来て幅が広がる。


 武器としても、釘打ち機のような、武器も考えている。

 円盤に杭をつけて、矢のお尻をたたいてもいいが。カム機構だけではなく、運動方向の変換。

 スライダ・クランク機構とスロット・クランク機構。よくわからないが、パズルが好きな有志。

 角田行生(かくだ ゆきお)弓場隆文(ゆば たかふみ)宮城有沙(みやぎ ありさ)

相葉友香(あいば ゆか)達が、いちゃつきながら考えてくれている。


 回転を直線にとか、回転を振動に。

 発想の元は、エロいことのようだが、元は何でも良い。

 各人が考え、作ってみることが、今はありがたい。



「なに。黒髪黒目の、見慣れない人種達だと?」

「そうです。突然どこからか、きたとのことであります」

「すべては、その者達の開発だと」

「どうも、そのようです。相変わらず、それがどう言う物かは不明です」

 やっと出た情報。オリエンテム王国、アレクサンデル=オルムグレン王は、宰相 スヴェン=ヘルナルに命令を下す。


「攫ってこい」

「はっ」

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