第9話 各国は混乱継続中
「なぜだ。何故、情報が出ない」
「分かりません。今現在。どんな武器なのか。いや、矢を飛ばすので、弓だとは思いますが、全く再現が出来ません」
うぬぬと悩む上官。
「錬金術師や工房の主人を集めろ。考えられるものを考えさせろ」
ここは、オリエンテム王国。
実は一番最初に、今回の計画を計画をした首謀者? 首謀国。
主に、技術や資源を多く出して、輸出により成り立つこの国。
妙な地形のせいで、南のメリディオナル王国への輸出は良いが、北のセプテントリオ王国への輸出と、海産物の輸入。西のオコーデンタリス共和国への輸出と、生地や反物を仕入れるには、パリブス王国を経由した方が早い。
そのため、通行税が重くのし掛かる。
意気揚々と出発をして、国境の村で謀反をしていい気になっていると兵達は殲滅され追い返された。
生意気なと、激高して砦に押し寄せ、期限だと振れたが返答は。
「知らんな」
そんな言葉と、矢の嵐。
ここも西と同じく。要塞の中間点が、矢の飛距離限界のはずだった。
だが、パリブス王国の矢は、それを平気で越えてくる。
それを放つ兵は、見た感じ全員だ。
特別豪胆で強靱な兵が混ざっている感じではない。
それは単純に脅威。
背中に矢を受けた兵達は、血が止まらず苦しみ。矢を抜けば余計に状態はひどくなる始末。
逃げ帰ると、現在の状況。
証拠として残っている矢を解析し、試作した弓で射ってみる。
だが、矢が重く。
逆に飛距離が下がる。
むろん、鎧を突き通す威力などは出せない。
仕方が無く、幾度か偵察に出て、商人達は通れるため、それに紛れて潜入をする。
だが今までのザルな情報管理とは違い、一切情報が出ない。
国自体が変わったと思うしか、理解ができない。
「この短期間で、一体何が起こったのだ」
困惑をするしかない。
まさか、時代を飛ばした情報が、偏りはあるが突然与えられた。
情報は力だ。
裕樹の言ったその言葉が、徹底された。
「情報はいくらでも取ってこい。金を使っても良い。だが与えるな。必要ならブラフを混ぜろ。本物の姿を見せるな」
インフィルマ=パリブス王も宰相マルムベルム=アスセナもその言葉を聞いて納得し、年若い裕樹を恐れる。
そして周囲でできあがる、よくわからない機械。
その周りで走り回る、生徒達の博識さに舌を巻く。
どうやって導き出すのか、高さや距離をその場で計算して、それに間違いが無い。
彼らの使う、簡便な数字の記述方を文官達も教えを請う。
アラビア数字。そして一〇進法。計測用原器の作製と配布により、簡単な図面で同じものが造れる。
当然重量も天秤と分銅により、簡単に測ることが出来る。
いや天秤はあった。
ものを買うとき、そのものによりメモリがあり、そこでつり合う銅貨を払う。
その仕組み、重心と距離。力点と支点に作用点。
それを利用した、滑車。漠然と使っていたもの。それを明示的に理屈を習った。
王達は知識の重要さを理解した。
水車や、蒸気機関による自動化。
物を研ぐ。それだけでも、砥石を回転させるだけで飛躍的に効率が上がった。
生徒達にすれば、小学校や中学校の知識。
それを披露するだけで、周りから喝采を浴びる。
それだけで、モチベーションは爆上がり。
もっと何か役に立つものをと、頭を使う。
それがかなりの好循環を生み出す。
むろん最初は、よくわかっていなかった貴族や兵達も要塞での勝ち戦の後、一気に態度が変わった。自分たちは安全に。敵は一方的に殲滅せよ。
その効果は大きく、兵達の意識が変わった。
敵に情報を渡すと、敵も同じ物を作ってしまう。すると、安全がなくなってしまう。
そう。それを想像できるようになった。
おかげで、情報統制がきちっと出来るようになった。
いま、前のように情報を流せば、味方により殺される。それほど、してはいけないことだと理解をする。
「うん。素晴らしい」
「彼の言った通り、各国が雪崩れ込んできて、税金が大量です」
「すごいな、かの国。じぽんだったか、恐ろしい。子供。それも国民すべてに教育を施し、国力を上げる。説明だけならわからなかったが、今は理解できる。それを統治するものは、民が賢い分だけ難しくなるが、賢い国民は嘘に騙されない。彼の言うことは本当なのだろう。確かにいい加減な情報の流布で、簡単に信用して右往左往するのは民度が低い証拠だ」
「そうですな」
「それが本当か、おかしな所はないかを考える頭。IQと言ったか、その指標で一〇も違うと会話が成り立たないと言っておった。わしらも精進をせねばならんな」
王たちは、どんどん洗脳されていた。
結果を見せると、信用をするしかない。
今確実に、パリブス王国は変わり始めた。
コンティニアス大陸で最弱から、大陸の中央で覇を唱える所へと。
ちなみに、北のセプテントリオ王国では、パリブス王国から変わったものを欲しがる商人が来て混乱をしていた。
海に生えている草。それを乾燥しろだの。
足の多い気味の悪い軟体生物。それを欲しがり、運搬用の生け簀だ、回転式乾燥機だ奇妙なことを教えてくれる。
その行商は変わったことに、女が幾人か混じり、道中を心配をしたが、周りを囲む男達が、道中の盗賊をすべて殲滅をしてくれ、逆に街道が安全になっていく。
そして、奇妙なことに盗賊達は、革鎧ごと切られていた。
腰に下げた細い曲刀は、かなりの業物なのだろう。
売ってくれと言ったが、素人が使うと折れるらしい。
そして、奇妙な事に生け簀の魚は、死なずに運べるらしい。
ただ、ポンプで空気とやらを送らないといけないとか。
漁村の連中は、説明を聞いたらしいが、よくわからなかったようだ。
酸素濃度とやらが重要だと言っていた。
だが、酸素が何なのかが、理解出来ない。
原子量が一六? だとか。
ただまあ、奇妙な物が売れて、此方もありがたい。
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