たまに更新のおまけ
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「れっいっちゃ〜ん」
少し高めの甘い声。声のした方へと振り返る。
「どうしたの?ヒカリ」
口角が上がり、高揚した表情で笑う彼女の
将来の“夢”は科学者らしい。
よくくじらと一緒に楽しそうに化学室に籠るのを見かける。
そういうとき、大抵くじらはげっそりとして
帰ってくるのだが、中でなにが起こっているかはヒカリとくじら以外誰も知らない。
度々爆発音がするのは置いといてー、、、
きっと楽しいことでもしてるのだろうと思っている。
「あのね、今日の放課後化学室に来て欲しいの!柊雨先輩とくじら先輩、それからつきみちゃんも呼んでくれたら嬉しいな〜」
「別にいいんだけど、ヒカリちゃんが呼んだらいいんじゃないの?」
「、、、こういうときは、玲ちゃんのほうがいいからさ」
と意味深に笑い、去っていった。
少女はしばらく考えたが全く結論は出ず、
考えることをやめた。が、のちに自分が利用されたことに気がつくのだろう。
***
「柊雨先輩〜!」
「わっどうしたの玲!玲が自分から二年教室まで来てくれるなんて、僕感激〜」
「ヒカリちゃんからの遺言、、、?あ、伝言か。
で、今日の放課後化学室に来てくださいだって」
そういうと、柊雨は突然固まる。
先程の優しい微笑みから硬い引き攣った笑みに変わる。
これは、実験だ、、、!!
中で何をしているかは知らないが、くじらが
げっそり帰ってくるので、危険視していた。
「そ、れって僕も行かなくちゃ駄目、、、?」
「はい!あとくじら先輩とつきみちゃんも」
柊雨は黙って俯き、目を怪しげに光らせ、
口を開きこう言った。
「あ〜じゃあくじらには俺から言っておくから任せて!玲はつきみちゃん誘っておいで?」
といかにも良い先輩を装い、玲の背中を押す。
半ば強制的に追い出された少女は、仕方なく
つきみを探しに行った。
***
「わああ!!みんな来てくれたんですね!」
化学室で、ヒカリは嬉しそうに目を輝かせながらそう言った。少女の横で、くじらは目を見開いている。
「えっえっ?!柊雨くん!!用事ってこの
実験のことなんですか?!てっきりお出かけとかだと思ってたのに!」
「え〜そうだよ?」
玲に任せて、と言った後柊雨は自分でくじらを誘った。どうせ行かなきゃならないなら、とくじらを道連れにする気だった。
なので柊雨は、
『くじらー!今日くじらと一緒に行きたいところがあるから、一緒に帰らない?』
とくじらを誘った。化学室、なんて聞いたらくじらが来ないのは一目瞭然だからだ。
にこりと笑う柊雨は悪魔的で、どこか楽しんでいるように見える。
くじらは柊雨を侮れない、と感じた。
「じゃあ、まずくじら先輩と柊雨先輩は椅子に座ってください!玲ちゃんとつきみちゃんはちょっとこっちに、、、」
その日、掠れた悲鳴が化学室から聞こえたとか聞こえなかったとか――
☆☆☆
「はぁぁ、、、」
げっそりと肩を落とし、柊雨は
「大丈夫ですか?ほら帰りますよ」
「玲はなんでそんなに平然としてるの、、、」
「?」
柊雨はこのパワフルプリンセスに常識は通じないと察し、言葉を続けることをやめた。
そもそも違う星の人なんだし、体力とか違うのかも――
考えてももう遅いのだ。柊雨はすっかり疲れ切っている。だが玲は体力が有り余っているらしい。
「柊雨先輩〜今から走って帰ります?」
「、、、むりむり。体力おばけだね」
「じゃあお姫様だっこでもしましょうか?」
「いや逆でしょ、、、」
こんな思い出も宝物で、青春なのだろう。
この学校に来て良かった。後悔なんてもう少しもない。友達の温かさを知った今は、辛いなんて感じない。
「ほら先輩どんどん歩くの遅くなってますよ!!やっぱりおひめさま――」
「大丈夫だから!僕体育とか苦手なんだよ」
紅く染まった空は、溢れんばかりの瞬く星のときに染められる。
ゆっくりと歩くそのときも、記憶のなかに
おさめられるから――
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