第72話 最後の仕上げ
マパリタから語られた作戦。それは途方もなく異質で、
ただ一つだけ違うのは、僕は望んで
「サンディ! 聞いているのですか? 返事をなさい!」
「あ゙ー、あ゙ぃっ。ずびばぜん……!」
魔法学校で迎える三日目――。僕は本日の〝特別授業〟を受けるため、僕が初日に火災を起こした〝屋外演習場〟を訪れていた。
今日はミルポルは
「なんですか? まさか体調不良ですか? それでも失敗は認めませんからね」
「あ゙っ、あ゙ーッ。――はいっ、大丈夫です!」
マパリタからの作戦を聞いたあと、僕は念のため〝
おそらく〝鍵〟の正体は、あの違和感のあった言葉。それは僕の意識が
エレナ、ドレッド、そしてレクシィ。僕の記憶に刻まれている、三人の
『んじゃ、私があんたを
『おっけー! えーっと、アインス! ヴァルナス! ミストリ――』
『まっ、待って待って! まずは安全確認を……って、ぐぇっ!?』
マパリタの魔法で首を締めつけられながら、ミルポルの並べる単語に意識を集中させる。こうして
『ゔぇぇ……。
『おつかれさまー! でも
得られた答えは〝欠けた言葉〟を〝五十音順〟に並べ替え、最初の八音だけを
『偶然でもないかもね。〝誰か〟が
それは、おそらくミストリア。それとも
しかし、たとえ
*
「それでは実技を始めます。
本日の特別授業の内容は、僕が初日に失敗した〝
「な……!? 待ちなさいサンディ! 呪文は――!」
「フォルス――っ!」
炎の魔法・フォルスが発動し、僕の周囲に複数の小さな火球が出現する。
「ごめんなさい、魔法を使っちゃいました。でも、この方が良いかなって」
「あっ……、
「先生の授業のおかげ?――だと思います。ほら、『
この世界の魔法は呪文で
「いまのは魔術? いえ、それとも少し違う。いったいどういう原理なのですっ!?」
「ぅわっ!? なんていうか、神さま?
僕の世界ではとっくに〝神〟や信仰は消滅してしまったが、それでも概念だけは記録として刻まれている。それに、このミストリアスには、神や人知を越えた存在が実在する。
「せっ、
「精霊……。なるほど、ありえない
教師は満足そうに
「
「ええっ!? ちょ……、それは困ります! わたしはどうしても、学校から出なきゃいけないんです……! この世界を、ミストリアスを救うために!」
実績を挙げた今ならば、この教師にも、僕の話を聞いてもらえるかもしれない。それにせっかくの好成績が、真逆に作用してしまっては意味がない。
僕は全身で〝
「
そういえば、僕は理事長の元へ謝罪に行くことになっていた。目的は少し増えてしまったが、この機会を生かして
「
「ありがとうございます、先生!」
僕は教師に深々と頭を下げ、
*
もしかすると、前にリセリアから〝目隠し〟をされて歩かされたのも、魔法学校には〝こうした仕掛け〟が散りばめられていたせいだったとも考えられる。
「ふぅ……。やっと着いた。……よしっ!」
どうやら魔法学校の理事長は、ドルチェという名の人物らしい。扉をノックし、自身の名前を伝えると、やがて扉の向こう側から、女性の声が返ってきた。
「はぁい、開いてるわよん。どうぞ入ってねんー」
この声は――。どこかで聞き覚えのある
「失礼します。あっ……。やっぱり、あなたはゼルディアさん?」
しかし僕の言葉を聞いた
「それって〝一発ギャグ〟ってやつぅ? アタシが女王様は、無理があるわよんー」
「えっ!?……あっ、そっか。――しっ、失礼しましたぁっ!」
そういえばゼルディアという名は、代々の女王が名乗る〝称号〟のような扱いだったはず。つまりは〝ドルチェ〟が、あの時の女王の本名だったということか。
「いいのよんー。悪い気はしないしねん。――サンディだったかしら? マグガレダ先生から聞いてたとおり、面白い子みたいねん」
おそらくは、さきほどの教師のことだろう。僕はドルチェに頭を下げ、初日に起こした事故の謝罪と、魔法学校へ来た目的を説明した。
「ええ、マグガレダ先生からも大体の事情は聞いてるわん。……って言っても、ついさっき長文のメッセージが送られてきたばっかりなんだけどんー」
ドルチェは
さらにメッセージには僕が
やや大袈裟ではあるものの――。ミストリアから『この世界を救ってほしいと』
「うぅーん。もはや
ドルチェは指を触手のように動かしながら、視線を天井へと向ける。
「そうだ。その〝遺跡〟さえ確認できればイイのよねん?
「へっ? はいっ、たぶん……。いえ、絶対に大丈夫です! 頑張りますっ!」
「あはっ、イイわよん。悪いようにはしないから。それじゃ交渉成立ねんー」
ドルチェは独特な鼻歌を口ずさみながら、
「相変わらず早いわねんー。さあ入って? アタシたちって特別な仲でしょ?」
「そのような心当たりは
新たに理事長室へとやって来たのは、なんと以前に〝勇者〟の世界で会った、あのリセリアだった。
「それで。
「もうっ、つれないわねん……。リセリア、ちょっとお願いがあるんだけど、このサンディを、
「正しくは〝封印都市オルメダ〟です、理事長。あの地へ立ち入らせるということは、この者は
リセリアは僕を
「ええ、もちろんよん。これは魔法界全体の――いえ、世界全体の、大きな変革となるかもしれないわん。うふふっ、アタシたちは〝歴史の目撃者〟になるってワケ」
ドルチェは無表情のままのリセリアに対し、身振り手振りを交えながら、
「わかりました。そこまでの自信がおありなら。ちょうど助手の研修も
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