第71話 逆転の発想
本日の授業を終えた僕は、ミルポルと
どうやら〝
「はーい、ピザ
ソファに腰かけた僕らの前に、ミルポルが皿に載った円形のピザを置く。
「邪魔。そこ置くな。――サンディ、
マパリタは
「あっ、うん。マパリタは食べないの?」
「時間の無駄。あとで分解して、必要な元素だけ摂取する」
相変わらず視線を紙に向けたまま、マパリタが淡々と言い放つ。彼女の言うような食事法は、まるで僕の世界の〝
今朝から何も食べていないということもあり、僕はテーブルの隅に置いた皿から一切れのピザを
「ミルポルって成績も良いんだね。いただきます」
「むぐっ?
マパリタは〝神童〟と呼ばれていたということもあり、この魔法学校でもかなりの好成績を残しているとのこと。もしかすると、次期〝リーゼルタ女王〟に選ばれる可能性すらもあり得るほどの快挙とまで言われているらしい。
「はぁ。
たしか以前に会った〝女王ゼルディア〟も、似たようなことを言っていた。やはり彼女らのような研究者にとって、
「そういえば、ミルポルたちって
「それね。これから話す。――よし、完成」
マパリタは右手に握った大型のペンを置き、上半身をほぐすような動作をする。
「アウラが無いから苦労した。わざわざ
「――デキス・アウルラの
僕が
*
「さて。それじゃ、そろそろ作戦会議といきますか。――ほら、手を出して。私と
マパリタは
僕は急いで
その瞬間――。周囲の視界が真っ暗に染まり、二人の姿しか見えなくなった。僕が驚く暇もないままに、続いて闇の中に、無数の小さな光が浮かび上がる。
「わっ……!? これって、まさか〝大いなる闇〟と世界たち……?」
この映像は、アルフレドの
《そうそう! よく知ってるね! あっ、ここでは〝口〟を使うんじゃなくて、こうやって〝手〟に集中して〝頭〟で
いまの僕らがどういう状態なのかはわからないが、とりあえずはミルポルの言葉に従って、手と頭に意識を集中させてみる。
《えっと……。こんな感じ?》
《ああ。上出来だよ。これなら財団の連中にも感づかれない》
どうやら、マパリタたちも〝神の眼〟の存在に気づき、
《まず、私らの居場所だけど――。
マパリタが言い終えた瞬間、周囲の景色が高速で移動を開始する。厳密には僕らが動いているのかもしれないが、三人は〝空間に座ったまま〟の状態を維持しており、加速度のようなものは感じない。
《ワルダメトリア――。簡単に言えば、機械だらけの世界って感じだ》
僕らの
《これ、機械だらけってよりも、機械
《正解。私らはデキス・アウルラが消される直前、この世界に自分らの
つまり、いまのミルポルたちは〝
《
《ううん。
仮想空間への移住計画は、世界統一政府からの通達でも度々取り沙汰されている。しかし、建設的な議論が進んではいないのか、計画は遅々として進んでいない。
《真世界テラスアンティクタスだっけ。せっかくだから見せてあげるよ》
マパリタは目を
独自の〝宇宙〟を有する〝真世界〟ということもあってか、かなりの力を要するようだ。彼女の
そして闇よりもなお深い闇を抜け、いくつもの惑星を越えた先に、全体が〝緑色〟に染まりきった、巨大な球体が出現した。
緑の正体は、もちろん植物。巨大な樹木は地表のみならず、すでに上空の大気までも貫いており、無数の〝手〟を広げるがのごとく、宇宙へ枝葉を伸ばしていた。
《ひゃー! すっごいよねー! これって、どうやって住んでるの?》
《わたしたちは地中に穴を掘って掘って、毎日毎日掘り続けて……。この〝地球〟の内側に、どうにか隠れ住んでる感じかな……》
正直、ここまでの酷さだとは思わなかった。すでに地球も宇宙も、植物たちの世界となりつつある。あの巨大な樹木は別の惑星へと〝種〟を飛ばし、いずれはテラスアンティクタスという世界の、すべてを支配してしまうのだろう。
《見せるんじゃなかった。悪いことしたね。でも、お陰で良案が思いついたよ》
マパリタは再び目を
《ミストリアス……。わたしの大好きな世界……》
なぜだろう。絶望的な状況の自分の世界を見た時よりも、もうすぐ失われてしまうであろう、
《救いたいんだろ? いいかい、よく聞きなよ。――かなり長くなるからさ》
《大丈夫。わたしは記憶力は良い方だから。そんな風に、
事実、僕ら〝最下級労働者〟こと〝
《そうか。……ふふっ、はははっ! それは好都合かもしれないね》
よほどの策を思いついたのか、マパリタは口元を
《サンディ――いや、あんたは
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