第70話 冷たい決意と熱い心
リーゼルタ王立魔法学校で過ごす二日目。僕は大失敗のペナルティである〝特別授業〟にて、かつて〝
無事に特別授業を終えた僕はミルポルと別れ、午後の通常授業のために曲がりくねった
当時は〝目隠し〟をされていたのだが、リセリアに
*
円形教室に着いた僕は自らの席へ着席し、
たしかルゥランの話では『すべての〝はじまりの遺跡〟を発見した後に、再びエンブロシアを訪れるように』と言っていた。つまりは
いや、おそらくはルゥランならば、わざわざ報告に向かわずとも、現在の
やがて中央の舞台に若い女性の教師が現れ、つつがなく授業が開始される。
「うふっ。カワイイ
今回の教師も、午前に負けず劣らずの
*
午後の授業の内容は、魔法を扱う際に必要となる特殊な道具、杖や指輪といった〝
こうした魔法陣は戦闘に関する分野のみならず、この世界のあらゆる生活用品や、構造基盤にも応用されているらしい。この教室の
次は実習ということで、教師が僕らに素材と工具の〝キット〟を配布しはじめた。
「うふっ。上手にデキるかなぁ……?
僕は教師に言われたとおり、配られた教材を設計図どおりに組み立てる。
まずは金属製のグリップに、硬い
「いいカンジよぉ……。これで
作業を終えた生徒らは自作の
「それじゃぁ、今日の授業はオシマイよ。ふぁぁ……。それじゃまたね?」
生徒らの成果を確認し、教師は大きな
その様子を見送った後、僕は作製した
『おっすー! ぼくは無事に終わったよ! 疲れたぁ。それじゃ待ってるね!』
通信機能を起動すると、すでにミルポルからのメッセージが届いていた。
「さてっと、また遠くまで歩かなきゃだ。……よしっ、頑張ろう!」
僕にとっては
*
「――ええっと、ここで合ってるよね?」
外見の様子から察するに、僕の個室と同じ小部屋のように思えるが。
「やぁ! 待ってたよ! 入って入って!」
「お邪魔しま――
ミルポルに手首を
「えっ? なにこの部屋……。ちょっと豪華すぎない……?」
なんと、その部屋の広さは僕の部屋の三倍以上はあると思われるほどに広く、ソファやテーブルや飾り棚といった、一般的な家具一式まで揃っている。さらに白い天井にはシャンデリアが吊り下げられ、床には柔らかな
「まぁー、それは気にしないで! マパリタの
ミルポルは僕を掴んだまま、部屋の中をどんどん進む。そして窓際の丸テーブルで本を読んでいる、黒い髪の女生徒の前で立ち止まった。
「マパリタ! ほらほら、約束どおり〝アインス〟を見つけてきたよ!」
「あー。イチイチ騒ぐなクソ野郎。……ってか、サンディでしょ?
黒髪の女生徒――マパリタは僕を
「はっ、はじめましてっ。マパリタさん。……えっと、じゃあ〝アインス〟を探してたのって、もしかしてマパリタさんの方なんですか?」
「マパリタ。タメでおけ。――まぁ、そんなところ。ミルポルから
実験という単語は気になるが、とりあえずは彼女のことは呼び捨てで、敬語も必要ないらしい。言い終えたマパリタは本を閉じ、
「ふーん……。やっぱ思ったとおり〝イイ眼〟してんじゃん。絶望の闇を受け入れながらも、希望の光も持ち合わせてる。……
最後はボソリと
「あんた、この〝ナントカ〟って植民世界を救いたいんでしょ? 自分の世界ってワケでもないのに。――理由を聞いてもいいかい?」
「えっ? うーん。やっぱり〝大好きな世界だから〟かな……」
僕が
この世界に降り立った時、初めて感じた
なにより――マパリタの言うように――絶望すら感じぬほどの深い闇の底にいた僕を、このミストリアスが〝本物の人間〟にしてくれた。
それに魔物や敵対者といった存在も、この世界を構成する大切な一部。時には
ただ〝生かされているだけ〟だった僕は、
だからこそ、必ず
僕はマパリタに包み隠さず、これらの胸の内を打ち明けた。
「そう……。あー、やっぱそっか……。ふふっ、あはははっ……!」
僕の話を聞き終えるや、マパリタが突然に笑いだす。しかし彼女の眼から流れ落ちる涙が、僕を馬鹿にしているわけではないことを物語っている。
「いいね。私には
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