第69話 消えた世界からの転校生
魔法王国リーゼルタに存在する、王立魔法学校にて。午前の通常授業を終えた僕は、午後の〝特別授業〟が行なわれるという、〝古びた教室〟までやってきた。
この教室は横長の長方形のような設計がされており、入口の引き戸との対角には、
しかし、今は〝そんなこと〟よりも――。
僕の視線は机の一方に腰かけた、ドワーフ族の小柄な生徒に
そんな彼女は元気に右手を挙げながら、一方的に僕に話しかけてきた。
「いやぁー、まいったよ! 友達が
ペナルティを受けた同士の仲間意識からなのか――。
「このミストリアスっていう世界さー、どーも平行世界の重なり方が特殊らしくって。でもまさか、いきなり魔物の大群が現れるなんて思わないでしょー?」
しかし彼女の魔法は失敗し、尋ね人どころか〝魔物の大群〟を学校内へと召喚してしまったらしい。当然、学内は大混乱に
「あはは……。うっ、うん……。そうだね……」
機械的に
すると不意に、彼女の口から〝僕の求めていた
「あ、ごめんね! 一人で話しちゃったよ! ぼくはミルポル! よろしくね! ここでは〝
ああ、やはり
「あっ……。えっと……。
まさかの
「んー? どしたの? 大丈夫?」
その時、教室の前方右側の引き戸が開き、あの〝魔女〟のような先生が教室内へと入ってきた。彼女は大きな
「時間です。ミルポル。サンディ。前を向きなさい。これより特別授業を始めます」
*
広々とした教室内に、生徒は僕ら二人だけ。その真正面に立つ教師は僕らを監視するかのように、鋭い
正直なところ、まるで頭に入ってこなかった。
教師から配布された用紙にペンを走らせている間にも、僕の意識は霧が掛かったかのように浮ついてしまい、隣の席のミルポルのことばかりを考えてしまう。
彼女――いや、
しかし、
授業に身が入らぬまま、教師の講義は粛々と続く。僕はどうにか意識を保ちながら、配られた紙へと黒板の文字を無気力なまま書き写す。
「――以上が〝
「うん。魔法を放つための素材っていうか、よくある
「ミルポル!
教師からの
「サンディ。
「へっ!? はっ、はい! 大丈夫です! もちろんです!」
「よろしい。それでは、本日の特別授業は終わりです。――明日は実技を行ないます。本日の内容をしっかりと復習し、くれぐれも同じ
僕らの用紙を回収しながら、教師がより一層の睨みを利かせる。
彼女の瞳に〝特殊な力〟は無いとは思うのだが、こうして正面から
授業を終えた教師は
「なんですか? サンディ。質問ならば手身近に」
「あっ、あの! 昨日はご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした」
罰を受けるのは当然だとしても、まずは罪を正しく認めなければならない。
自身の
「充分に反省しているようですね。それでは理事長の元へも謝罪に
「えぇっ!? いっ、今からですか?」
「まさか。理事長先生は多忙の身。
言い終えた教師は速やかに引き戸へと向かい、足早に教室から去ってしまった。僕は脱力感の
「へぇー。
「悪いことをしたのは事実だから……。それに、いつまでも
僕はミルポルの方へと
「ねぇ、ミルポル。アインスって名前、わかるかな?」
「あっ! もしかしてアインスのこと知ってるの!? ぼく、この世界にアインスを探しにきたんだよねー! まぁ半分は、友達に付き合ってるだけなんだけどさ――」
「ミルポル、じつはわたしが〝アインス〟なんだ。アルティリアの酒場で別れて、君の
今度は僕が、
「そっかー! まさか
僕の話が一段落するや、再びミルポルが嬉しそうに話をはじめる。
この〝マパリタ〟とは
「会えて嬉しいよ、アインスー! あ、
「
「あっ、それはねー。ちょっと
そう言いながら、ミルポルが自身のポケットから
「はいっ、登録かんりょー! さて、次の授業に向かおっか! そんで午後の通常授業が終わったら、ぼくらの部屋に集合ね!」
「
ミルポルに強引に
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