第68話 退屈と焦燥の先に見た希望の光
魔法王国リーゼルタに存在する〝はじまりの遺跡〟を探すため、僕はハーフエルフ族の少女〝サンディ〟の
しかし、リーゼルタへの潜入に成功したまでは良かったのだが――。
魔法学校の管理体制は相当に厳しく、自由に街へ出ることが出来ない。おまけに僕の大失敗も相まって、
*
そして学校生活二日目の朝。僕は定められた時刻に起床し、本日の学習へ向かう準備をする。こうしていると本当に、ここが〝どちらの世界〟なのかわからなくなってしまう。もちろん
僕は寝巻きから制服へと着替える前に、もう一度シャワーを浴びることにした。長い髪に慣れていないこともあり、酷い寝癖がついてしまったのだ。
「朝は
こうした浴室は街の宿にも存在し、通常は〝
「ふぅー。さっぱりしたぁ。……さてと、急がなきゃ」
僕は〝制服〟に着替えて髪を整え、
*
始業時間に遅れぬよう、僕は定められた教室へと足早に向かう。いつもの〝ポーチ〟や〝財布〟の代わりなのか、制服のポケットには小型の
「
黒い石版に薄い
「うぇぇ……。このシステムは、ちょっと
僕は
*
教室の内部は円形の構造となっており、授業を行なう教師を中心として、生徒用の長机が階段状に配置されている。それぞれの机には三人から五人が着席できるほどの長さがあり、これらが規則正しく敷き詰められた様子は樹木の
中央の天井付近には、光沢のある巨大な水晶玉が吊り下げられており、ここに教師の描いた図画や文字などが、全周囲に投影されるという仕様らしい。
「わぁ。ちょっとすごいかも」
生徒らの長机の上には大型の
すでに教室内では多くの生徒たちが席に着き、近くの友人らと談笑を交わしている。しっかりと数えたわけではないが、少なくとも五十人以上は居るだろう。
「見つけた。――あっ、ごめんなさい。ちょっと通りますね」
生徒らの間を
周囲の生徒たちも僕と同じく、真っ黒な
「うーん……。でも、わたしはいいや」
僕は学生としての生活を
*
しばらく待機していると――。教卓のある中央部分が床下へ向かって下降を始め、やがて眼鏡と白衣を着けた若い男性教師を乗せて、元の位置へと戻ってきた。
生徒は〝女子〟のみであるものの、教師に関してはその限りではないらしい。人気のある人物なのか、彼の姿を見た生徒たちからは、小さな歓声が上がっている。
「ふむ、ふむ。どうやら
教師は紫色の前髪を左手で払い、
その瞬間、教室内に軽快な音楽が流れだし、巨大な水晶玉から紫の光が放射状に拡散されはじめた。続いて教師の名前と思われる
「それでは、
そう彼が言った
僕は〝学校〟という施設を、
*
魔法学校というだけのことはあり、その授業内容も〝魔法〟に関するものが大半のようだ。登場時こそ不安ではあったものの、この教師の授業も、それほど奇をてらったものではない。
「さあ、さあ。簡単に理解できましたね?
すでに僕は、このような知識は充分なほどに熟知している。
そして〝魔力〟は
つまらない授業内容に、僕の口からは
「おや、おや。退屈そうですね? そこの十三番。魔法と魔術の違いは
欠伸をした瞬間を見られてしまったのか、教師が手にした
「へぇっ!? はい、えっと……。魔法は呪文を唱え、
以前に〝勇者〟の世界でエピファネスが使っていた、炎の蛇を操る魔法。おそらくは、あれも〝魔術〟の一種だったのだろう。
「ヴィ・アーン。じつに結構。しっかりと理解しているようですね」
教師は
その後も退屈な授業は続き、現在の呪文の成り立ちや、魔法の体系化への取り組みといった内容が続けられる。再び教師に目を付けられぬよう、僕は
*
どれくらいの時間が
僕は再び鳴り響いた、盛大な拍手で目を覚ます。
「ボルモート先生、今日も素敵だったよね!」
周囲の生徒たちからは、さきほどの教師に対する様々な賛辞が聞こえてくる。これが女生徒という
「次は〝特別授業〟なんだっけ。また歩かなきゃだ」
続いてポケットから携帯型の
僕は次の目的地を記憶に刻み、談笑を続ける生徒の合間を
*
高低差のある直線と曲線が複雑に入り交じったかのような、魔法学校の
閉鎖空間に閉じ込められているせいもあり、どうにもミストリアスに居るという感覚が乏しい。特に、さきほどの教室に
「上手く言えないけど、なんか
こちらを目で追う絵画の人物に軽く会釈を行ないながら、
*
木製の扉は所々が
この教室は長方形をしているようで、さきほどの円形教室とは違い、僕の持つ〝学校〟のイメージに近い様式となっていた。室内は清掃こそ行なわれているものの、どうにも部屋全体からは、
広々とした教室には個人用の学校机が二台しか設置されておらず、その片側には、すでに別の生徒が着席を済ませていた。しかし、そちらへ目を
「えっ……? あれって、まさか……!?」
木製の椅子に腰かけた、ピンクの髪を頭の左右で
ドワーフ族である彼女は小さなサイズの
少女は僕の声に気づいたのか、ゆっくりと
「おっすー! ここに人が来るなんて珍しいね!
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