第73話 ノーマルエンドは光と共に
リーゼルタ魔法学校の理事長・ドルチェと、かつて〝勇者〟の世界でも出会ったリセリア。彼女らと共に、僕は〝封印都市オルメダ〟なる遺跡へ
その入口は〝理事長室〟への道順よりもさらに複雑極まりない迷路を進んだ先に
「あの、そのオルメダって場所は、この学校にあるんですか?」
「厳密には〝リーゼルタ〟の内部にあります。それよりも前を見て歩いてください。ここで迷ってしまえば、永遠に
リセリアからの
「
「ええ……。でも、たしか新たな神となったミストリア――様が、
「そうです。では、説明は不要ですね」
「もうっ、イジワルねんー。これから向かうオルメダは、その
つまり、オルメダは異世界からの
「
ようやく
「おっすー!」
「あー。
どうやらリセリアの言う助手とは、ミルポルとマパリタのことだったらしい。
「マパリタ。
「まーまー! ほら、ぼくは助手の助手ってことで!」
前言撤回。やはりミルポルは、勝手について来た
「まったく。それでは開きますよ。――ここからが本番です」
リセリアは手にした大型の
「素早く入ってください。すぐに閉じてしまいますので」
扉の中には広大な闇の空間が広がっており、一歩先すらも確認できない。しかしリセリアは
*
リセリアの
「わわっ。
僕は先日の授業で作った〝
「そんなものは役に立ちません。これから点灯します。目を
リセリアは言いながら、淡く光る
「
そう彼女が口にした直後、僕らの頭上で凄まじいばかりの〝光〟が弾けた。
僕は
「えっ……? ここは……。まさか……」
目の前に広がっていた光景は、ひび割れたアスファルトの道路と、
「おや。やはり異世界の者にとっては、この光景に見覚えがあるのですか?」
「いえ……。わたしは頭の中の〝記録〟でしか知りません。でも……。なんだか、とても懐かしいような……。悲しいような……。うまく表現できないんですけど……」
この感情は、なんだろう。まるでとても親しい人の、
*
「このオルメダは、ご覧のとおり〝神の裁き〟によって滅ぼされ――。現在では太古の歴史や異世界からの技術を研究するための、貴重な史料庫となっております」
「ええ。そして、ここはリーゼルタの
ドルチェは左手で目を
「あれって、教室にあった〝
「正解です。あれは
リセリアの話によると、このオルメダから発見された遺物を元に、
「いまの
「うっ……。がっ、頑張ります。それで、肝心の〝はじまりの遺跡〟はどこに?」
僕の目的は一刻も早く〝最後の遺跡〟を発見し、元の世界へと戻ることだ。リセリアによる魔法技術に関する
「ああ、そうでしたね。こちらへ」
リセリアはズリ落ちかけていた眼鏡を正し、観光案内をするかのように四人を案内しはじめる。そして僕らが
無機質な立方体の内部には、記録の中にある〝電化製品〟に類似した
「あっ、間違いない! これだっ……!」
目の前にあったのは、これまでの冒険で見かけた石の台座と
「よかった、ちゃんと〝
「当然です。
リセリアからの厳重注意を受け、僕は彼女に頭を下げる。これでようやくすべての〝鍵〟と〝鍵穴〟が
「よかったねー! サンディ! じゃあ、これで
「うん……。ありがとう、ミルポル。マパリタ。――そして、理事長にリセリアさん。連れてきてくれてありがとうございました」
まさかリーゼルタの〝はじまりの遺跡〟が、リーゼルタの内部・オルメダに存在していたとは。もしも当初の計画どおり、学校を抜け出してリーゼルタの街へと飛び出していれば、この場所を見つけることは完全に不可能だっただろう。
「まぁ、私の〝実験〟のためでもあるからね」
マパリタは左手で自身の髪をかき上げながら、僕に右手を差し出してくる。すると僕が手を握った瞬間、頭の中に彼女の声が流れはじめた。
《サンディ。いちど消えてしまったものを元通りに復活させんのは、はっきり言って不可能だ。だからね、再び世界を創りなおすんだ。あんた自身の手で》
《再び世界を……。わたしが、創りなおす……》
僕の手を握るマパリタの目が、真っ直ぐに僕を見つめている。
《私にも〝大好きな世界〟があった。だからあんたを、最後まで応援させてもらう》
マパリタの冷たく悲しい色を
《あの〝
つまり、最後の
《それでも忘れるんじゃないよ。あんたは決して、
どうやらマパリタは徹夜で思考や考察を重ね、さらに計画を練りあげてくれたらしい。この使い古された応援さえも、彼女から言われると不思議と勇気が
マパリタとの無言の
「ああー! いいなぁー! それじゃ、ぼくとも最後にキスしとく?」
「ちょ……! そういうのはいいからっ! でもミルポル、本当にありがとうね」
「へへー! まっ、ぼくは
たしかに、元の世界へ戻るのは〝僕〟だけだ。――するとミルポルの言葉を聞き終えた
「あっ……。そろそろ
「もう行っちゃうのねんー。それじゃ
「ふむ。全身を発光させながら昇天する様子でも見せていただけるのかと思いましたが。あとでどのような変化が起きたのか、
初日の失敗は取り返したとはいえ、まだまだサンディにとっては、苦難の日々が続いてしまうようだ。やがて僕の意識は完全な分離状態となり、ゆっくりと天上の光の中へと吸い込まれるように上昇し続ける。
「わたしなら大丈夫だからっ! あとのことは任せてね?――
僕の眼下でサンディの長い金髪が
僕は頼もしい四人の仲間に見送られながら、光の中へと
魔法使いルート:探求/解き明かす者 【終わり】
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