第66話 明日へ繋げるリスタート
世界を救う鍵を握る、四つの〝はじまりの遺跡〟を探すため、僕はガルマニアの
しかし、国境を越えて早々――。僕は西のガルマニアと北の
「クソッ、どこだッ!? どこを見ても植物ばかりだ」
僕は
僕は耳と鼻の感覚を
その中に混じり、ほんの
「よし、見つけた! 間に合ってくれ――ッ!」
瞑じていた両目を開き、さらに飛行のスピードを上げる。風の結界を
*
到着した場所は
道の脇には破壊された馬車が横たわっており、すでに逃げ去ってしまったのか、これを引いていたであろう〝馬〟の姿は見当たらない。
そして横転した馬車の
何よりも二人の周囲には、巨大な
ここは少女らの保護を最優先に、
「とうッ! アルフレド、ここに参上ォ――! そこの嬢ちゃん、無事かッ!?」
しかし僕の思考とは正反対に、
「えっと……? あっ、あのっ……?」
「おおっと、話はあとだ! まずはヤツラを片づける! この俺に任せておけ!」
黄色の瞳を見開いたまま固まっている少女に対し、僕は親指を立てながら歯を見せる。歳の頃はミチアよりも少し上といった程度の、まだまだ幼い少女といった年代か。血を流し、横たわっている老人とは違い、彼女に目立った外傷は無いようだ。
「ちょっ……。あのっ! じゃ、じゃあ私も一緒に戦います! 彼らを一刻も早く制圧し、
言うが早いか少女は巨大な〝盾〟を持ち、勇ましく立ち上がる。その盾は
「先に行っちゃいますよ? はあぁ――っ!」
少女は大盾を
「うおっ、これは
アインスの時と違い、
「ぐッ――!?
素手とはいえ、僕の拳は完全に魔導兵の胴体を
「魔導兵は、魔力を込めた武器じゃないと! えっ……? まさか素手で……?」
頭上で盾を回転させ、周囲の魔導兵らを振り払いながら、少女が僕に目を向ける。彼女の盾は
しかし、
僕は呪文を唱えながら、改めて構えを取りなおす。
「ふっ、弱点さえ
炎の魔法・レイフォルスが発動し、僕の両手が燃え上がる
「うむ! 何事も試してみるものだなッ!」
見た目どおりに鈍重なのか、幸いにも魔導兵らの動作は遅い。振り下ろされる巨大な斧や剣を素早く
すると、さきほどの攻撃の時とは違い、僕の右腕が魔導兵の黒い胴体を背中のバックパックごと
崩れた残骸の内部に肉体や機械らしきものはなく、人体の骨格を模したものと思われる、金属製の簡素な骨組みが
「考えるのは
戦闘への集中を
*
少女との共闘の
この少女はネーデルタールの貴族令嬢であるらしく、ガルマニアの
倒れていた老執事も少女の治癒魔法で回復し、被害は馬車のみで済んだらしい。どうやら少女は老執事が傷を負ってしまったことで、悲鳴を上げてしまったようだ。
「聞きたいのだが、その兄さんってのは――」
「いけません、お嬢様! いまはディクサイスとの戦争中なのです。素性の知れぬ者に旦那様の名を知らせるなど、
少女に
どうやら今回の世界では、ディクサイスとネーデルタールが戦争を行なっているようだ。それに近々ガルマニア軍も、ネーデルタール側として参戦をするとのこと。
前回の〝勇者〟の世界でも、ディクサイスは最終決戦の直前に至るまで、単独で魔王軍と渡りあっていた。さきほどの魔導兵は簡単に撃破できたものの、
「もう!
スカートの
僕自身に関しては、特に気にすることもない。老執事の判断は
「なに、彼の判断は適切だ! それより、二人だけで平気なのか?」
「はい、ご心配なく。せめて何かお礼が出来ればいいんですけど」
「おっ、それでは〝はじまりの遺跡〟というものが、どこに
僕の質問に対し、少女は小さく首を
すると彼女の斜め後方に
「それでしたら……。まさに〝この森〟の中に
どうやら僕の目指す目的地は、この森に存在していたようだ。
僕は二人に礼を言い、去ってゆく後ろ姿を見送る。戦争中ということもあり、まだ魔導兵と
それに僕は一刻も早く、僕の成すべきことを成さねばならないのだ。
*
老執事から教わったとおりの道順を辿り、ついに僕はネーデルタールの〝はじまりの遺跡〟を発見した。なんと遺跡は原型を残さないほどに朽ち果てており、あの
「よくもまあ、コイツだけは無事だったな」
僕は台座の頂点で光を放つ、大きな
屋外に
あとは
しかし、問題はリーゼルタに入る方法だ。あの国は常に世界を飛びまわっており、現在の
「ふぅむ。そいつは困ったねぇ」
どこか他人事のように、アルフレドが口を開く。
僕の本来の性格とかけ離れているせいなのか、それとも創りたて
ん? 新しく
確か、あのリーゼルタには――。
「よぉ、そろそろ決まったかい? そんじゃ、俺との旅はここまでだ!」
まさか、アルフレドは
「あとのことは任せておけ! 俺は俺の正義に従い、この世界を守り続けてやる! 短い間だったが、楽しかったぜ――
そう言った
やがて視界が白く染まり――。
脳が、心だけが、
そして次に気がついた時。
すでに僕は現実世界の、
冒険者ルート:救済/強き信念を宿す者 【終わり】
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