第62話 魔王との最終決戦
扉の先にはドレッドから聞いていた通りの広々とした空間があり、足元には前方へ向かって紫の
「よぉ、しばらくだなリーランド。再会を祝して乾杯といきてぇとこなんだが――
ドレッドは目の前の男を見据え、縦長の広間を真っ直ぐに歩んでいく。しかし玉座に
「お前さんにも深い事情があることは察するが――。オレの祖国、ネーデルタールを滅ぼしてくれたことに関しては、やはり
カイゼルは左右の手に
魔王の頭の左右には
「フン、やはり貴様らか。弱き敗走者どもが、いまさら俺に何用だ?」
自らに接近し続ける僕ら三人を
「まぁ……。あん時、見逃してくれたことにゃ感謝するぜ。――そのおかげで、こうして心強ぇ仲間を連れて、おまえを
ドレッドはニヤリと口元を上げ、僕の顔を見上げてみせる。彼の目元は兜に隠れ、はっきりと表情は確認できない。
「くだらんな。新たな仲間を加えたようだが――。俺を
「いいえ、僕が絶対に
僕は迷いなく玉座の前へと進み、魔王にバルドリオンを突きつける。
「ほう? その剣は。――面白い。ならば、この〝ユグドシルト〟を
そう言うと魔王は立ち上がり、玉座に立て掛けてあったと
《あの盾はあらゆる攻撃を防ぐぞ! 勇者の奥義でもビクともしない!》
魔王を見つめる僕の頭に、バルドリオンからの警告が響く。しかし大した問題ではない。最初から魔王に対しては〝勇者の技〟を使うつもりはないのだから。
「さて、派手に街を破壊してくれたようだが――。この神聖なる王城は
「それについては謝罪しますよ。でも、あなたをこのままには出来ません」
僕はバルドリオンを構え、戦闘態勢に入る。ドレッドとカイゼルも武器を身構え、攻撃を繰り出す準備へと移行しているようだ。
すると魔王が
そして次の瞬間――。魔王の肉体が見る間に
さらに魔王の首から下は硬質な
《いきなり第二形態ってやつか! 気を抜くな! 一気に決めろ!》
そんなことは言われずとも。すでに周囲は瘴気に支配され、暗い紫色をした
*
「へっ、準備は出来たってか? そんじゃ、そろそろ――おっ
ドレッドが自身の数倍以上はあろうかという魔王を見上げ、斧を手にして
《ユグドシルトは使い手に合わせて変化する! だから誰の手にもピッタリだ!》
頭に響く説明を聞き流し、僕もバルドリオンで魔王の足元を狙う。
「フン、無駄だ!」
魔王は翼を広げて飛び上がり、
「滅びよ! 弱き者どもよ!」
鋭い爪の伸びた右手を
「オレたちが
カイゼルが風の魔法を放ち、巨大な剣の数本を旋風で
僕は二人の援護を信じ、魔王への一騎打ちを挑むべく
「
「ええ、あなたに比べれば。あなたは本当に強く、素晴らしい人でしたから」
バルドリオンの刃を右手の爪で受け流しながら、魔王が
「フン、貴様などに何が解る? 俺は貴様など知らぬ!」
「僕の名前はアインスです。あなたが覚えていなくとも、僕は〝あなたたち〟を忘れはしません。リーランドさん、そしてヴァルナスさん――!」
そう僕が言った瞬間、魔王の動きが
その一瞬を狙い、僕は魔王の胸元へと飛翔する。――しかし僕の攻撃は、寸前の所でユグドシルトによって弾かれてしまった。
「アインス……、だと? なんだ……? 俺は貴様など知らぬ……。グッ……!」
別の平行世界の記憶が
「いいぞ、アインス! 今だ、デケェのを叩き込め!」
巨大な剣と斬り結びながら、ドレッドが頭上の僕に向かって
「クッ、貴様は何なのだ? あの二人からは激しい怒りや悲しみ、そして
「僕は世界を――。ただミストリアスを、守りたいだけです」
ただの〝
「僕はミストリアスを守ります。この世界のすべてを。空を、大地を、あらゆる人々と存在を――。そしてリーランドさん、ヴァルナスさん。あなたたち二人も!」
そう宣言した
「お二人にも大切なものが、守りたい
魔王が両手で頭を抱え、
「ウグア――ッ、オオオォ――ッ! 俺はァ! 俺たちは――!」
内に宿る〝なにか〟と格闘するように、魔王が全身を
《今だ、
僕の頭に二人分の〝声〟が響く。
それはかつて共に戦った、懐かしい二人の声。
僕はバルドリオンを真っ直ぐに構え、一気に魔王との距離を詰める。
そして
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