Gルート:再世神ミストリア
第75話 心優しき農父アインス
あれからどうなってしまったのだろう。気づけば僕は樹々に囲まれた地面の上で、うつ伏せになって倒れていた。立ち上がって周囲を見回してみるも、辺り一帯は薄暗く、現在地を特定できそうな目印もない。
「これは……。
しかしガルマニアで見た〝
「そうだ、ディスクは? 僕はどういう状態だ?」
まずは
「持ち物は
僕が自らの両手を
「よし……。ここまでは、すべてが順調だ。……あとは誰にも会わないように、四つの〝はじまりの遺跡〟を
ミストリアスの
「まずは街の位置を確かめよう。それで現在地を――」
方針を決め、僕が歩きはじめた
「くっ……!? マズイっ……! いまの僕では……」
ワーウルフは正確に
「なんだ? そこに誰か居るのかっ!? むっ、おのれ魔王の手先め!」
そこへ、戦闘の気配を感じ取ったのか、剣を手にした見知らぬ若者が魔物の前へと飛び入ってきた。彼は魔物の爪を切り飛ばし、続いて
しまった。マパリタの予測では〝
「どうした!? 逃げ遅れた者が居たのか?」
「いや、魔物が一匹だけだった! 少し様子が変だったが」
「魔王の〝気〟にやられたんだろう! 急げ、アルティリア戦士団と合流するぞ!」
さきほどの彼には、僕の姿が見えていなかったのだろうか。
それにしても。この〝最後の世界〟には、どうやら〝魔王〟が現れているらしい。それでは
「さっき、彼らは〝アルティリア戦士団〟と……。じゃあ、ここはアルティリアか」
あの戦士団は基本的に、アルティリア領内の自警を行なっている組織だ。僕が魔王リーランドと戦った際にも、彼らは王都やエレナの農園などを守ってくれていた。
「よし……。それなら一直線に森を抜ければ、海か、
僕は意を決し、人や魔物の気配に注意しながら、素早く森の中を進むことにする。
さきほどの若者を追うという案もあるが、まだ〝
もしも本当に〝消える〟のならば、それは僕だけでいい。
僕は独りで
*
どれくらいの距離を進んだのか――。
周囲の景色は
「そろそろ……、どこかに……。しまッ――!?」
足元がふらついた
さらに間の悪いことに、僕の周囲で〝瘴気〟が一点へと集結し、それらの
「立って! こっちへ来て、早く――っ!」
その時、女性の声が響くと共に、僕の目の前にコボルドの頭が落下した。僕は〝声〟に従って身を起こし、その
「よかった、間に合った! 行くよ、走って!」
長い黒髪を
まさか、彼女の右手の剣は――。
いや、そんなことよりも。彼女には僕の姿がはっきりと見えているようだ。女性は左手で〝来い〟のジェスチャをしつつ、森に
頭が〝長考状態〟に入りそうになるのをどうにか
「父さーん! 見つけたっ! どうにか間に合ったよー!」
黒髪の女性は大声を上げながら、僕と共に森の中を一直線にひた走る。すると彼女の声に答えるように、落ち着いた男性の声が返ってきた。
「わかった! こっちに人が来る気配は無い。ここで合流しよう!」
いったい、どういうことなんだ。
声の男性は
それに、どことなく懐かしいような、この聞き覚えのある声は――。
「やあ。間に合ってよかった。まさか、ここで
女性と共に
「まさか……。あなたはアインス、なのか?」
*
「疑問は多々あるだろうけど、この森は魔物の
「え……? ちょ、ちょっと待っ――」
「大丈夫! ちゃんと全部話すから! ねっ、行こっ?」
疑問の言葉を制するように、女性が僕の左腕に、自身の右腕を
確か、彼女はアインスのことを『父さん』と呼んでいた。それに彼女の腰に下がった片刃の剣は、
「うんっ。もちろん、わたしのことも。それじゃ父さん、出発出発ぅー!」
「了解。……その光景は、ちょっと複雑な気分になるけれど」
アインスは
「もう
「えっ、ミルポルが?」
僕がミルポルと会ったのは、二回目の
「まだ、わたしが小さい時だったよね。二十年以上も前だっけ?」
「そうそう。あの時には、おまえが盗賊団に入るなんて夢にも思わなかったよ」
アインスはチラリと
「もー! いまは完全に足は洗ったから! それに悪い人たちじゃなかったし。わたしに〝風の魔法〟も教えてくれて。……団の名前はヘンテコだったけど」
二十年以上も前。それでは
「ミルポルさんから、色々と聞かされてね。別の
「それにアレフおじさんも!
僕の顔を見つめながら、
アインスの娘ということは、
「そういえば、君の名は……」
「あっ……! ごめーん……っ! そういえば、まだ言ってなかったね」
彼女は僕の腕から離れ、小走りで前方へと駆けてゆく。そして、すぐにその場で立ち止まり、改めて
「ファスティアですっ! はじめまして。――父さんっ!」
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