第56話 ラストコンティニュー
大長老ルゥランとの戦いに敗れ、僕の意識は
これは
《私は、愛してしまいました。この世界を。そのすべてを》
頭に響く、幼い少女の声。これはアレフが
《最後の時が近づいています。もう頼れるのは、あなただけ》
やはり以前と同じ
《私は、重大なる罪を犯しました。私の選択により、あなたは犠牲となります》
僕が犠牲になることには、恐怖も不安も迷いもない。
でも、ミチアは。どうしても彼女は助けてあげたかった。
ただひとつ、それだけが僕の後悔だ。
いつしか足元の映像は、
*
《真世界の〝光の鍵〟を。どうか四つの〝はじまりの場所〟へ》
最後の
《終了を
僕は絶対に
いや、違う?
なんだろう、この違和感は。
ミストリアは何を伝えようとしている?
僕は〝なにか〟を見落としている?
《私に八つの〝
神の眼。痛み。虚ろ――。それから、八つ。
わからない。もう少しで〝なにか〟に思い当たりそうなんだけど。
足元の映像が切り替わり、今度はエレナの農園を出力した。そこでは畑で
彼女らの近くにはアルティリア戦士団のカタラも
『神の眼を
『いえ。
『そうかい。バラしても
ルゥランとのやり取りがあったせいだろうか。なぜか今になって、
『まずは
数字、名前、八文字――。僕の情報を、
僕の
『えっ。こんなに?』
『うん。
『
これは僕がアルティリアの市場に、野菜を出荷した後のやり取りだ。
合言葉。キーワード。――鍵、単語。
もう一度エレナの姿を
これは、まさか――。
しかし考えている間もなく、映像は再びアルティリアの教会を映しはじめた。
*
今度は礼拝堂の中で、ソアラが
そんな二人の全身にも、あの〝
『ミストリアスの滅びは、もう止められません。〝偉大なる古き神々〟の決定に
これはルゥランの言葉。賢者の知識と助言を求め、ようやくエンブロシアを訪れることができたというのに。与えられた答えが
『さて――。自らの頭で
切り取られた会話の内容が、
ミストリアスの消滅は
『私も色んな世界を救って回ったんだけどねぇ。魔王や神を倒したり。なかにはどうにもならずに世界ごと消えちまったり、そうかと思えば簡単に復活したり』
『世界が、復活? いったい、どうやって……』
またしても迷宮監獄の男の言葉。消滅を
――その時、僕の
柔らかく穏やかでありながら、白き闇をも貫く光。
そして次の瞬間。祭壇から
そんな二人の足元には、穏やかな表情で横たわる、ミチアの
この騒ぎに気づいたのか、
やがて彼らの目の前で、ミチアがゆっくりと目を開けた――。
*
まさか……。これは夢か幻覚か。
本当にミチアが
ソアラに抱きしめられながら、ミチアは〝僕〟を見つめるかのように、じっと
「私には、この程度の奇跡しか起こせません」
僕の間近で聞こえた声。それは
いや、ミストリアのものだった。
「すでに私の力は尽き、たった一人を救うだけが精一杯。しかし、私が千年に渡って
それを僕に伝えるというのか?
それを使って僕にミストリアスを、世界全体を復活させろと?
「今の
痛み。これまでの
そして周囲の言葉も〝虚ろ〟に聞こえ――。
「神の奇跡など
まっ、待ってくれ! ようやく、ようやく答えに
もう少しだけ時間を――ッ!
しかし僕の心の
そして僕が目を開けると――。
視界には木製の天井と、汗に
*
「ああ、アインスさん……。よかった。気がついたのね?」
「レクシィ、さん……? じゃあ、ここは……」
「評議会の医務室です。もう
ルゥランに敗北した僕は一命を取りとめ、レクシィによる
「その服、大切な人の想いが込められているのね。剣の方は腕と一緒に
どうやらゼニスさんに
見ればレクシィの白い
「ありがとうございます。レクシィさん。――本当に」
僕はベッドに身を起こし、その場で彼女に頭を下げる。
「あっ、いえ。いいのよ。好きでしたことだから。――それじゃ
そう言ったレクシィは柔らかく
*
一人になった僕はポーチから
残りの日数は半分か。しかし現実の
僕はベッドから足を下ろし、靴を
「もう一度、ルゥランさんに会わないと。彼に聖剣の
おそらくルゥランは戦いの中で、僕に助言を行なったのだ。彼も〝神の眼〟を持つ者の一人。だからこそ、あの場で
僕に〝痛み〟の意味を教えるために。僕を〝諦めさせる〟ために。
僕に世界を救うための、ただひとつの正解を示すために――。
諦めた先にも道は在る。諦めたからこそ可能となる行動がある。
そして諦めたからこそ、
『神の眼を欺くんだ。奴らはすべてが視えるからこそ、認識できないもんがある』
世界の内側に在る
それらに対する抵抗だけは、僕は決して諦めない――。
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