第55話 大長老ルゥラン
世界を救う手がかりを求め、ついに〝
しかし入室して早々、僕は面食らうことになる。
室内には家具の
右手に植物や鉱石などで彩られた
考えるまでもなく、この人物が〝大長老ルゥラン〟なのだろう。
「覚悟は
「ちょ……!? ちょっと待ってください!」
「そっ、そうですルゥラン様! まずは彼のお話を……!」
いきなり戦闘を始めようとしたルゥランに対し、僕とレクシィが
「アナタの目的ならば存じております。ID:PLXY-W0F-00D1059B06-HH-00BB8-xxxx-ALP。登録名、アインス」
あの〝犯罪者〟の世界で聞かされて以降、すっかり覚えてしまったアインスの
「まさか、ルゥランさんも〝
「
ルゥランの言葉を聞いた
「不思議ですか? アナタは一度だけ、その名前を名乗ったことがありますね?」
「そうか、
「まさか。ただ〝
それが〝神の眼〟の力――。それとも〝
確かエピファネスからは『ルゥランは〝空間を渡る能力〟を所持している』と聞いていた。これは単純に現実界と異空間を行き来するだけのことだと思っていたが、まさか
「じゃあ……。僕の目的というのも……?」
「魔王リーランドを
「そうです。……でも、それだけではありません。僕は本当の意味で、このミストリアスを救う手がかりを探しに来たんです。あなたに知恵を借りるために……!」
僕は力強く言い放ち、ルゥランの紫色の瞳を真っ直ぐに見つめる。彼は
「ミストリアスの滅びは、もう止められません。〝偉大なる古き神々〟の決定に
「それでもッ……! それでも僕は、絶対に
拳を握り、前のめりに身を乗り出す僕に対し、ルゥランは表情を変えぬまま左右に
「仕方がありませんね。やはりアナタには力を
「なぜ戦いをっ!? ルゥランさんは、この世界がどうなっても構わないとでも!?」
「アナタも
すでに会話は終了したということか。ルゥランは
「その構え……。
「ええ。ファランギスとは共に武術を磨いた仲でした。しかし彼は〝武闘派〟であったが
「似た者同士だと、思いますけどね」
僕の言葉にルゥランの口角が
なぜエルフの
「さて――。自らの頭で
もはや僕の問いには答えず、ルゥランが全身で〝
「
驚いている暇もなく、ルゥランの拳が至近距離で炸裂する! 僕は
「アインスさんっ!」
「レクシィ。結界を張りなさい。巻き込まれても知りませんよ?」
「どうしてですかルゥラン様っ! 彼は世界を救うために……!」
悲痛な叫びを上げるレクシィを無視し、ルゥランは僕に
「今の一撃で、腹に風穴を
「しっかり
「はは、ワタシとて多忙な身。常にアナタを視ているわけにはいきませんよ」
どうにか防御できたものの、今の一撃は破壊的な威力を誇っていた。エレナがくれた戦闘服がなければ、僕の腹部は本当に
鈍い苦痛と
「それでは――。次はアナタの
そんな僕の心情を察してか、
「カレクト――ッ!」
土の魔法・カレクトが発動し、僕の肉体を
「良い反応です。――しかし、未熟!」
聞こえてきたルゥランの声は、なんと僕の
「
突き出された
「終わりです。ハァァ……、
わずかな〝溜め〟の動作のあと、ルゥランの手刀から光の刃が放たれた!
これは確かファランギスの手によって、ヴァルナスが真っ二つにされた時の技だ。
「フレイト――ッ!」
僕は空中で
「これは興味深いですね。しかし守っているだけでは、救えるものも救えませんよ」
決して挑発に乗ったわけではないのだが――僕は風を纏ったまま、ルゥランへ向かって突撃する。そして剣の間合いに入ると同時に、素早く剣を振り下ろした!
「くッ! また消えて……!?」
「アインスさん、もう充分です! ここから逃げて!」
レクシィは祈るように両手を組み、僕に必死に訴えかける。彼女の
「いいえ、逃げません。僕は絶対に、世界を救いたいんです……!」
「まだ諦めていただけませんか。それでは仕方ありませんね」
議場内に響き渡る、
「ゼルデバルド――ッ!」
その言葉が聞こえた直後、僕の目の前に〝暗黒の剣〟を手にしたルゥランの姿が出現した! そして彼は迷うことなく、黒き刃を僕の右腕に振り下ろす!
「がッ……!? あっあ゙がぐぁぁ――!」
闇が振り下ろされた瞬間。僕の右腕が斬り落とされ、黒い稲妻によって〝消し炭〟と化した! さらに闇の
「さあ、アナタの
凄まじい痛みが僕を
だめだ、このままでは、
「アイン█さんっ!? █ゥラン様! もうや……、彼……思いで、エ……█シア……」
「レクシィ、彼は
「どうし……!? ヴァル██も彼……、██トリ……に、頑張って……に!」
ぼくは――。僕は、ここまでなのか。せっかくエンブロシアまで来れたというのに。魔王を倒す手段も見つけ、もう少しで手が届きそうだったのに。
《……まだ終われない!……》
そうだ。まだ終われない。終わるわけにはいかない。僕が、アインスが
「ヴィスト……!」
「まだ……。まだ、終われないんです……」
僕は真顔のルゥランを
そして僕は自身の
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