第53話 真実への手がかり
ゼルディア女王との作戦会議を終え、僕らは個別に用意された、城内の寝室へと案内された。説明されたところによると、どうやら〝
「ふぅ、お腹がいっぱいだ」
小さな寝室に入るなり、僕はベッドに
どうにも〝もったいない〟という思いから――。僕は会議室を出る際に、
しかし、あれは
僕は両手を頭の後ろで組み、それを
内装の違いこそ天と地ほどの差があるが、この小さな部屋には窓が無いということもあり、どうにも
本日はミストリアスで過ごす十二日目。しかし実際には数時間しか経っておらず、現実の僕は今もなお、全自動ベッドにて横たわっている状態だ。もしかすると現実世界と異世界では、単純に時間の流れが異なっているのかもしれない。
「真世界・テラスアンティクタスだっけ」
名前というものは原則として、対象の〝外〟に
「真世界の、鍵……」
魔王を倒す手段には近づいているものの、未だ世界を救う手立ては発見できていない。あの〝
とはいえ現実世界においては、僕に自由は無いに等しい。仮に何かを手に入れようとしても、必ず統一政府からの監査や
「向こうで僕が持ってる物なんて、接続器と〝ミストリアンクエスト〟のディスクくらいだけど」
統一政府の
僕は両手に力を加え、自らの後頭部を持ち上げるように身を起こす。現実世界の肉体と違って頭痛はなく、当然ながらアインスの頭に
「ん……? そういえば」
接続器のことを考えていたためか、僕の
僕の記憶が定かならば、〝ミストリアンクエスト〟のディスクの大きさは、ちょうど
『真世界の〝光の鍵〟を。どうか四つの〝はじまりの場所〟へ』
――まさか〝鍵〟の正体は、あの光り輝くデータディスクなのか?
そう考えはじめてみると、様々なことに納得がいく。そもそも
しかし鍵が〝ディスク〟だとしても、いったいどうやって持ち込めばよいというのだろうか。単純に〝全接続〟を行なえば、簡単に実現できるのかもしれないが。
「……いざとなったら、
アレフにナナに、
*
僕は少し気分を変えるべく、城内への散策に出てみることにした。すると寝室の外に出るなり、
どうやら衛兵は僕の警護、および監視の任務に就いているようだ。彼に気分転換をしたい
「どうぞ。お戻りの際にはお申し付け願います」
柔らかい革張りのされた両開きの扉前に着くや、衛兵はリーゼルタ式の敬礼をして、僕を
「おう、アインス! へへっ、やっぱおめぇも来たか!」
僕の姿を認めるや、ドレッドが上機嫌で話しかけてきた。見ればラウンジ内の空間には、アルトリウス王子やカイゼル、エピファネスらの姿も確認できる。彼らも僕と同様に、
ラウンジ内にはバーカウンターや
僕らはカウンターで飲み物を
「エンブロシアの誕生は千年前に
エピファネスの話によると、元々エンブロシアは異空間ではなく、この〝現実界〟と呼ばれる通常空間に存在していたらしい。そして彼ら砂漠エルフらも、大長老ルゥランの元で暮らしていたそうだ。
「ある時、ヒュレインらの軍勢により、エンブロシアは
「えっ? ガルマニアの場所は、元々はエルフたちの国だった?」
「
大長老ルゥランは、
「じゃあ、砂漠エル――いえ、マナリザートの
「
「はい。魔王を討伐するため、
なるほど。これで砂漠エルフたちが協力してくれる理由を理解することができた。やはり彼らには彼らなりの思惑があるといったところか。魔王を討伐後の行く末に
「そういえば王子も、
「ええ。アルティリアの建国王・アルファリスは偉大なる勇者と巫女の血族だと伝わっております。それも遠い伝説ですので、確かなことはわかりませんが」
個人の寿命が千年を越えるエルフたちとは違い、普通の
「ふっ、これは
カイゼルは本に目線を落としながら、相棒に向かって質問をする。
「んや、そんな話は聞いてねぇなぁ。――まっ、俺らは気ままなドワーフだ! どっかで血も途絶えちまったんだろうよ! がはははっ!」
ドレッドは
*
僕らが雑談を進めていると――。不意にラウンジの扉が開き、リセリアが入ってきた。そして彼女は室内を見回すこともなく、真っ直ぐに
「皆さま、お待たせいたしました。エンブロシアより返答がまいりました。『勇者アインスを客人として迎え入れる』と」
「ゆっ……、勇者!?」
「その方が話が早く済みますからね。あら、違ったのですか?」
リセリアは僕の顔を見つめながら
「いえ、大差はありません。僕は必ず勇者になりますから」
「ええ、大変結構でございます。それでは早々に出発されますか? 明朝になされても、
「もちろん、今すぐ向かいます。一刻も早く〝聖剣〟を持ち帰らなければいけませんから。――いいですか?」
僕は王子ら仲間たちを
「承知いたしました。それでは王立魔法学校まで案内します。こちらへどうぞ」
「私たちは先に地上へ降り、〝
「はい。
僕は仲間たちに別れを告げ、リセリアと共にラウンジを出る。
さらに迷路のような城内を進んで城外まで出ると――。会議と待機で
魔王リーランドを討伐するために。そして真に
僕はリセリアの
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